半兵衛

吸血鬼の半兵衛のレビュー・感想・評価

吸血鬼(1956年製作の映画)
3.5
タイトルは吸血鬼と謳っているが、実際は女性の血を抜き取って殺害する謎の殺人者を主人公の新聞記者や警察が追う犯罪映画。

題材としてはジャーロにもホラーにもなりそうなのだが、まだイタリア映画独自のスリラースタイルが確立される前なので最後の大追跡や影を巧みに使った映像など1920年代のフリッツ・ラング作品を彷彿とさせるクラシックなサスペンスに仕上がっている。一方で新聞記者や警察がボンクラで終盤まで一切手がかりを掴めないという、イタリアの恐怖映画の定番が既に確立されているのが興味深い。ただあまりにも無能すぎてイライラし、「警察やめちまえー!」と野次りたくなったのも事実。

当初は撮影担当だったものの監督であるリカルド・フレーダ(この監督はイタリアでは結構有名な人らしい)が途中で降板してしまったため後を引き継いだマリオ・バーヴァのモノクロ撮影による美と恐怖が混在した映像やおどろおどろしさをひきだす演出は素晴らしく、後年の活躍ぶりの予兆を感じさせる。特に『血ぬられた墓標』で有名な若い女性の顔が老いていくという演出が本作で既に完成されているのに驚かされそのシーンだけでも見ごたえ充分。舞台となる古城や墓場といったギミックの使い方も◎。

犯罪者たちと主人公たちによる一進一退のドラマはそれなりに楽しめるが、話の詰め込みが甘いためラストの解決も「血を抜く行為にどんな意味があったのか?」「本物のあいつは何処へ行った?」「事件の重要参考人は?」といったモヤモヤが残るため今一つしっくり来ないのが残念。そしてラストの唐突な恋愛ドラマに呆然する。
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