人間って弱い、そして貪欲。
本作の見どころはなんとしても綾野剛!「怒り」を見てから彼の繊細な表情が好きだったけど今回は正反対。馬鹿正直で憎めない感じが良い。繊細な役〜馬鹿なワルまで表現できるのが彼の良さだよね。
めちゃくちゃ真面目な青年がどんどん悪に染まっていく様は見ていて複雑な気持ちになった。冒頭コメディ色が強かったからこそ後半は見ててキツかったな。実話ベースだからこうなっていくのは仕方ないけれど。
この作品の怖いとこはこれが実話ベースという事。こんな事が実際にあったんですね。そこが何とも恐ろしく胸糞悪い。「普通に捜査してたらチャカなんか出ませんから」巷でWHOの信用がダダ下がりしてますが、これ見ると日本の警察も信用できなすぎる。この台詞やたらリアルで、この先拳銃の事件がある度に思い出すだろうな。
この先ややネタバレあります。
自分の女がシャブしてたシーンは刺さった。シャブは駄目だって頑なに言ってたのにそれが自分の女も自分さえも毒してしまった。そこだけでも彼の信念を貫いてほしかったものだ。
劇中に「使えるもん使って、じゃないと世の中良くなんねえだろうが」ってセリフがある。でも彼がした事といえば、結果は拳銃買って検挙してヤクを世間にばら撒いた。彼の中の正義とは何だったのだろうか…
どれだけ頑張っても一度悪に染まれば自転車操業みたいになって、どんどん転げ落ちていく。救いたかった仲間も地位も信用も、正常な自分さえも全て手放して落ちるとこまで落ちてしまった。
性行為のシーンやたら目立ってた気がするのがマイナス。刑事しての葛藤や自分自身への問いかけみたいなのが欲しかったな。諸星があまりにも流されすぎというか薄っぺらい人間に見えた。最後の終わり方もスッキリしないし、最後は綺麗にまとめてほしかったな…そのためやや低めのスコアで。
悪い事には手を出すべきじゃないし、自分の信念は一つは持っておきたいと思った。