垂直落下式サミング

ONE PIECE FILM GOLDの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ONE PIECE FILM GOLD(2016年製作の映画)
3.5
大好きなロブ・ルッチ。海軍元帥の赤犬にタメ口で話してるのが解釈一致。自分の立場が上がったら、年上だろうと敬語使わなくていいってタイプだよね、君は。公務員さんの出世がうれしいよ。
今回の敵には悲しい背景があるんだけど、この映画だけみてもよくわかんない。裏設定とかまで知って、はじめて同情的な目を向けられる。でも、劇場版の設定資料とか読んだ上で、ワンピ世界に対する理解度の高さを求めてくるのは問題だよな。ファンムービーとはいえ、ちょっと不親切。
金獅子とかゼットとかは、劇中でかつてどんな人物だったのか回想してくれるけど、今回のテゾーロは語られなさすぎ。ワンピース世界の政治体系とか身分制度とかを知ってること前提過ぎて、映画だけみても境遇がこの怪物を生んだんだと、その悲しみが伝わってこないから、ただの傲慢な悪役に見えちゃう。
登場人物の背景に、過酷な尊厳破壊の過去をほのめかすのは、尾田栄一郎の十八番だけど、にしても想い人を目の前で奪われて自らは奴隷に身を落として…とか重すぎて少年誌には載せられないですね。
常に奪われてきた人生だから、これ以上奪われないように、力を誇示する。誰かに支配されないために、自分が他者を支配する側にまわろうとするのか。
今もまだ怒りに囚われているから、一番憎いはずの奴らと同じやり方しか思い付かないのかな。なんて悲しいのでしょう。
アクションについては、ギア4がはじめて映画に出てきたし、なかなかよかったと思う。バトル漫画の劇場版は、ドカーンバコーンな力の押し付けあいになりがちだから、映像でみると案外つまらない絵面になりそうだけど、わりと戦闘にバリエーションがあって楽しい。
敵能力者の倒しかたとか、しっかりと弱点をついたり機転を利かせて攻略していて、特にラキラキの実を無力化する方法はトンチが利いていてよかった。
原作でも、敵陣営に力押しじゃあゼッタイ勝てない絡め手能力者がいて、そいつとマッチアップしたウソップがボロボロになりながら金星あげることで、戦況を打破する場面が何ヵ所かある。ウソップだから勝てたんだと、そう感じられるような勝ち方をしてくれるから痛快。
ゲスト声優も素敵だった。ドMのケンドーコバヤシとドSの菜々緒。ちゃんとはまり役。きもてぃー!