スズキ

アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場のスズキのネタバレレビュー・内容・結末

4.6

このレビューはネタバレを含みます

視聴中も視聴後もすごく考えさせられる。答えがないからこそ、たくさん考えて悩まなくてはいけない。

作戦に対する許可がなかなか下りない組織のもどかしさから、“現代の”戦争まで上手く描き出していた。
近い未来で自爆テロにより生まれかねない80人の犠牲者と今まさに戦争の渦中にいるたった一人の少女を天秤にかけ、後者を爆撃に巻き込んだ。もちろんそこまでにあらゆる手段、可能性を計算し尽くした結果。誰も少女の命を見殺しにしようとはしていなかった。
何百人という人をテロで殺したであろう人々がたった一人の少女のために荷台から機関銃を下ろし病院へと運んだ。
その光景をただモニターの前で見つめているしかできない歯痒さと無力感。

無人攻撃機を使っていても戦争に関わっているのだからPTSDにもなるということを知っているつもりでいたが、その実なにも解っていなかったことを痛感した。
目の前で何の罪もない人々が苦しむ姿をみること、その原因が自分の押したスイッチであること、自分はただそれをモニターの前で見ていることしかできないこと、その全てが苦しみに繋がる。だからこそ本作でドローン・パイロットを演じた二人の役者さんの演技は素晴らしい。

8枚のパンをきっかけに、少女の命がテロリストと同じ天秤に乗せられたことがとてもリアルに感じられた。ナイロビと日本との時差はたった6時間で、私たちが家族と夕食を共にしているまさにその時、本作と同じ命のやり取りが行われているのかもしれない。
フィクションからとは言え、知ってしまったからには責任が生じる。自分には何が出来るのだろうか。
スズキ

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