新海誠のポップラブコメディ、一種の集大成。
新海版「時をかける少女」である。
これまでずっと時間と人のすれ違いラブロマンスを描き続けてきた新海誠が、ようやく主人公とヒロインが出会える物語を描いた。というのが一番の感想。
人の想いは変わっていくもの、それは時間の流れが存在するが故。
時間というものは人によって流れているスピード、体感している質量が全く別物であり、だからこそ変化し、すれ違い、人はそれぞれの人生を歩む。
そんなことをポジティブ2割、ネガティブ8割で表現してきた新海誠だが、「君の名は。」は本当にポップ。
大衆受けを狙いすぎとか、いろんな捉え方があるだろうけど
個人的にはこれでよかったのではないだろうかと思っている。
それまでのセンチメンタルなところから「星を追う子供」ではかなりスピリチュアルなところまで踏み入れ、唯一持っていたポップさから程遠いところに行ってしまった。
(これはこれで哲学なのでありなのだが)
この辺りからジブリゾーンに突入した気がする。
次の「言の葉の庭」では本来のラブロマンスに戻り、しかも同じ時間軸に存在する二人を描くようになる。実に珍しい。
しかしそこは新海誠。時間のすれ違いを、生きる年齢とそれによる環境の差で表現している。
さながら新海版「耳をすませば」である。
この流れを見ると本作はたどり着くべくしてたどり着いた王道ラブロマンスだと言えよう。
なぜか細田守作品に寄せてきたけれど。
内容に関してはまず、メイン声優をつとめた二人には拍手喝采。
取り立てて技術が高いとは思わないがスマートに耳に溶けてくる演技は素晴らしかった。
キャラデザインとキャラクターの動きなど、描き方と演出を評価すべきかもしれない。
とにかく耳につかず、引っ掛かることもなく及第点。
シナリオは穴だらけ、もしかすると細かい設定などでフォローしているのかもしれないが一度観ただけでは決してわからない。
タイムパラドクスに対して誰も説明してくれない。
黄昏時というのもなんかこじつけくさいし、噛み酒とタイムリープの説明も不十分。
「夢」という言葉や雰囲気でうまいこと誤魔化したつもりかもしれないが、ダメ(笑)
まあ、その辺を雰囲気で許せちゃうくらいにはテンポ感も演出も良い。
あと主人公が何したいのか、絵が無駄にうまいのもいまいち説明なし。
突っ込んだら切りがないほど。
難しく考えたら負けな映画です。
感覚で瞬間を楽しむのが吉。
正直、新海誠の真骨頂である空や風景の描写は物足りなかった。
観た環境があまりよくないので、Blu-rayとかで再観賞してみます。
なんやかんや言いましたが十分楽しめる映画ですのでオススメします。