えうろぱ

囚われた少女たち/選ばれし少女たちのえうろぱのレビュー・感想・評価

2.5
現在も地球のどこかで起きてる「性的人身売買」のリアルを映画という形にした作品。

普通に生きてきた女性がたまたま人身売買の男に目をつけられ口説かれ気付けば逃げられない状況になって売春させられる、という自分の意志とは関係なく人生を捻じ曲げられる感じが堪らなく恐ろしかった。人身売買男は普通の男を装って近付いてくるのだから女性は自衛のしようがないし、危険を感じた時には既に住所、家族構成など把握され「逃げたらどうなるかわかるよな」と脅されて従うしかないの逃げ場がなさすぎて本当に恐ろしすぎる。しかも警察もグルで救いはない……。
自分の娘を探してると売春宿にやってきたおじさんが救いの手を差し伸べようとしてくれたけど、それもきちんと救出のルートがあるわけじゃなく手探りで逃がそうとしてくれるだけ。「警察に言えば助かる」とかの確実な救いのルートが存在していない恐ろしさ。(結局この救出劇うやむやになってどうなったのかよく分かんなかった)

最後は売春宿に(いやいやとはいえ)落とした張本人が主人公を救い出してくれたわけだけど、それも単に形を変えた地獄が継続するだけだった。家には帰れず、一家の男たちの監視に怯え、ヘマをしたら売春宿に戻すと脅され、かつて愛し合ったその男ウリセスとは以前のように笑い合うことなんて到底できない。ラストシーンで一家が楽しそうに今後の話をし子供達の遊ぶ声が流れる中、主人公が絶望に沈んだ瞳を斜め下に向けただじっとしているのが印象に残った。彼女の人生はずっとこんな感じで続くのだろうか。そんな状況でも生きていく意味とは……とつい考えてしまった。

一度セックスワークに関わると二度と抜け出せない恐ろしさと、メキシコの現状を教えてくれる映画だった。あまり人にオススメできる映画ではない。
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