りょう

特捜部Q キジ殺しのりょうのレビュー・感想・評価

特捜部Q キジ殺し(2014年製作の映画)
3.8
 「特捜部Q」という邦題が警察コメディを連想させますが、良質なサスペンス作品としてのクオリティが2作目でも維持されています。
 序盤に事件の当事者である登場人物を紹介する場面がなく、現在と20年前の時間軸が交差するので、相関関係を理解するのに少し時間がかかります。なじみのないデンマーク風の名前もやっかいです。被害者である双子の兄妹がキーパーソンになるだろうという思い込みもあり、物語の構造を認識するまでに苦労しました。
 謎解きの要素よりも、キミーの過去から現在に至る苦悩と顛末をカールとアサドの捜査の過程をつうじて丁寧に描いています。性描写も暴力描写も直接的で、高校生が当事者になる場面も少なくないので、クライマックスの壮絶な描写も含めて、本国では賛否あったのかもしれません。警察幹部の汚職や捜査の妨害のようなことも描かれていますが、ほとんど回収されないままだったことは残念です。
 ご都合主義の偶然や奇抜な発想で捜査が進展するという要素もなく、相変わらず不愛想なカールが地道な捜査にのめり込む姿が印象的です。息子との関係性を好転させられない不器用なところも彼のキャラクターの特徴で、そこを素材にしたエンディングの描写や暗転のタイミングも完璧でした。かなり説明的な描写を抑制しつつも、ちゃんと物語が理解できるようになっている緻密な脚本と演出がすばらしいです。
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