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KUBO/クボ 二本の弦の秘密のカポERRORのレビュー・感想・評価

KUBO/クボ 二本の弦の秘密(2016年製作の映画)
4.3
今回は先日レビューした『劇場版 ひつじのショーン~バック・トゥ・ザ・ホーム~』に続き、ストップモーション・アニメ大作、『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』の感想を綴りたい。
尚、KUBOの発音は『久保(ku⤴︎︎︎bo)』ではなく『クボ(ku⤵︎ ︎bo)』なので、注意されたし。
声優を務めた母君役のシャーリーズ・セロンが『久保(ku⤴︎︎︎bo)』どころか『空母(ku⤵︎ ︎bo)』と発音する様…私は初見時些か面食らってしまった。
とは言え、「まーたインチキ日本文化マシマシ映画かぁー」と嘆くのは早計だ。
本作を、そんじょそこらのなんちゃってフジヤマ・ニンジャ映画と混同してはならない。
ここには、本作の監督であるトラヴィス・ナイト氏(スタジオ・ライカのCEO)が、8歳の頃に父親と共に訪日し衝撃を受けた『愛すべき日本文化』に対する最大級のオマージュが盛り込まれているのだから。

レビューの前に、私がストップモーション・アニメ作品と、それを手がけるクリエイターを、こよなく愛する理由を記しておく。
確かに、本作のように『1週間かけて平均僅か約3.31秒分しか撮影が進まない』といった途方もないミッションに打ち込む作り手の驚異的な忍耐力には、惜しみない尊敬と賞賛の念を送ろう。
しかし、私が無二の感銘を受ける所以は、そこではない。
それは、クリエイター達が『人間が感知できない一瞬(1コマ=1/24秒)』に、全身全霊を傾け魂を吹き込むことで、現実世界では絶対に成し得ない“時間と空間の創造”を成し遂げようとする“情熱と志”なのだ。
人は一瞬をコントロールして完璧に生きることなど出来ない。
神でもなければザ・フラッシュでもないのだから。
しかし、少なくとも、ストップモーション・アニメのクリエイター達は、その一瞬を支配し、2時間あまりの完璧な世界を創造することが出来るのである。
凄まじいではないか。
彼らが挑むは、正に神の御業なのだ。

さて、話をレビューに戻すと、本作はアニメとは言え、ストーリーや世界観がかなりダークである。
あらすじを一言で言えば、主人公の少年KUBOが、【父を殺め、母をも亡き者にした、闇落ちせし祖父と叔母】に立ち向かう冒険ファンタジーだ。
正直、物語の構成は実にシンプルで、展開も目を見張るような驚きはない。
感動号泣映画や二転三転のどんでん返し映画を期待される方は、肩透かしを食らうかもしれない。
かく言う私も、常日頃はそちら側の住人なのでよく分かる。
だがしかし、本作に限っては…
あろうことか”立ってしまった“のだ…


…『全身の鳥肌が』!!!
なに故か?
それは…作中全てのカットに込められた、クリエイター達の【規格外の魂(ソウル)】と【日本への果てしない敬意(リスペクト)】によるものだった。
舞い飛ぶ折り紙…大波に呑まれる帆掛け舟…死者を映し出す数多の灯篭…天空にこだまする三味線の神々しい音色…。
アメリカ人のクリエイター達が、KUBOの表情だけでも実に48,000,000種にも及ぶ膨大な造形物を生み出し、無数の”一瞬“にありったけのパトスを込め、鑑賞者の五感と精神に訴え続けるのだ…
…「これが愛する日本だ!」と。
正直、私自身、このような理由でハイスコアを付けたのは初めてで、驚きを禁じ得ない。
これはもはや倭国日本の神々の御業と言えるのではないか?
日出ずる国の八百万の神が、アメリカはオレゴンの地でピザとハンバーガーを食べながら一心不乱に本作を作り上げた?…うむ、なかなかに興味深い。
そんな本作に興味を持たれた方は、是非一度御鑑賞頂きたい。
現在、U-NEXTとFODで配信中。

………

嗚呼、大事なことを言い忘れていた。
ストップモーション・アニメーションの八百万の神はアメリカだけに留まらず。
無論、この日本にも最強神が鎮座在している。
その偉大な神の名は…

     『八代健志』

神の作りし『劇場版 ごん Gon, The Little Fox』のレビューはまたの機会に。

KUBO「おしまい」
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