トライン

好きにならずにいられないのトラインのレビュー・感想・評価

好きにならずにいられない(2015年製作の映画)
2.0
ハゲデブコミュ症の主人公、社会はどれだけでも彼を追い立て誹謗し傷つける。それでも彼は悲しいほどに"いい人"なのだ。

一つ前に見た映画で、北欧映画は暗い!なんて別に暗くもない映画で言われていたものだから、北欧映画の本領発揮と言えばこの映画だなぁって思うくらい、人生の生きづらさを詰め込んだ作品。現実にパッとしない生涯を送っている独身男性が見たら、マジでどうにかなってしまいかねない。

はっきり言う、救われない。
この主人公はどんな状況であっても、何ならこのストーリー外でもおそらくは、ずっとずっと良い人間であったし、それがラストにおいても変わらなかっただけで、何かを成し遂げたわけでもないし、何か前進したり変化したわけでもない。この人間の良い所を時間を掛けて他者が認め始めただけのことでしか無いのだ。そんな酷いことがあるだろうか?

少し脱線するが、重松清作品に多い「困難を解決など出来ないから困難なのだが、そういった中でも人間は強くなれる」等のテーマがあると私は思うのだが、コレは主人公がそういった解決しがたい困難に相対して、成長し変化し順応したからこそ得難い心境の変化で身を焼く苦しみをも伴に出来るという話の仕立てだと思っている。されこの話にたちかえってはどうか。

この主人公は地獄を既に受け入れている。ひどい世の中を受け止めている。どんな悲しみも自らの優しさ一つで受け止めきっているのだ。それをただ脇で見やる我ら観客の思いはどうか。笑うか?称賛するか?違うだろう、そんな、そんな心無い人間はいないはずだ。誰か、誰か主人公のこれほどまでに清く美しい心に、応えてはくれぬのかという、報われてはくれぬのかという思いではないのか。されど応えられない。報われない。

もう一度言うが、救われない。心底救われない。

でも悲しいかな、現実の社会もそうなんですよ。
この映画を見て思うのは、この世の中高潔に生きて
満足するのはひょっとして自分だけなのではないか、
傲慢に利己的に生きてこそなのではないかと、
そこまで思い込むほど、本当に行き辛さを感じた。
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