YokoGoto

ある戦争のYokoGotoのレビュー・感想・評価

ある戦争(2015年製作の映画)
3.8
ー戦争における正義の価値ー

アメリカのトランプ大統領はシリアのアサド政権を、生物化学兵器を使ったとして空爆したばかり。
このタイミングで、このテーマ。
皮肉なもので、色んな角度で、改めて考えさせられる『戦争における正義』。

『偽りなき者』の脚本家であるトビアス・リンホルムが監督した作品。
アフガンに駐留するデンマーク軍のキャプテンが、ある日のパトロール中にタリバンの襲撃を受け、仲間と自分を守るため、敵が発砲していると思われる地区の空爆命令を行った。しかし、そこにいたのは民間人だった事が判明し、軍法会議にかけられる。

115分の映画の中で、ちょうど半分を堺に、アフガンでの任務と母国デンマークでの軍法会議のシーンに分けられる。
アフガンでの戦争映画は何本か観ているが、どの映画を観ても、あの黄土色した大地の中の乾いた銃撃戦は、恐ろしいものがある。

本作の監督も、極力、過度な演出は行わず、手ブレカメラで自然な映像で後世することで、やはりアフガン戦争を追体験させるような構成にしている。冒頭5分くらいで、その緊迫感は一気にピークに達し、キャプテンの判断のキッカケとなる出来事のシーンは、リアリティ溢れるシーンとなっている。

映画全体は、必要以上にドラマチックな部分はなく、比較的好みの映画であった。

前半の60分くらいは、全くテーマが見えてこない。
しかし、軍法会議にかけられることが分かってからの60分は、実にひたすら考えさせられる。

『あぁ、こういう事を言いたいのか?』と思いながらも、観ているこちらがわにも、答えの出ない結末が素晴らしいと思った。

あの判断は、正義なのか国際法違反なのか。
映画の中で迎えた結末だけでは語れない。
観る人に、いつまでも考えさせる映画。映画らしい映画だと思う。
YokoGoto

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