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ミッドナイト・サン ~タイヨウのうた~のJIZEのレビュー・感想・評価

3.8
賛:新時代のティーン向けロマンス映画として古典的な男女恋愛のプロットを取りつつも主演ベラ・ソーンのフレッシュな芝居から息を吹き返していたように思う。また病状の"XP(=色素性乾皮症)"に関しても学問的な見地からその脅威を観客へ認識させるコトに特化させた親切構造だった。ベラ演じるケイティが持ち前の才能からクラシックギターを弾く描写が劇中で何度かあるが単なるお涙頂戴の難病映画としてだけではなく青春の一ページを輝かしいほどの群像劇としてデフォルメして描き込んでるのは本作の魅力に思う。非常に純度が高く高質な映画でした。ちなみにベラ主演の『ラストウィーク・オブ・サマー(2017年)』という映画では中盤から恋愛群像が明確に憎悪サスペンスへと切り替わるので本作を観て物足りなかった人は手堅く推奨したい一品である。

否:主人公の病が深刻化しだして以降の尻すぼみ感が後半は特に顕著に感じてしまい前半の青春を謳歌する勢いが一気に失われてしまう。また日光を避けず外出するコトを周囲が軽はずみに許諾したり恋人にあたるチャーリーに深刻な持病のコトに関して伝えてないのはあからさまに危機感の低さが露呈した部分だろうか。結末が大体中盤ほどから安易に予測できてしまうのも何かもう一捻りがあれば既存の難病映画を更新できていたかもしれない。全編良い部分が多いだけに結末の締め方に呆気なさがのこる。

監督スコット・スピアーの最新作『ステータス・アップデート(2018年)』でも同様に感じたが男女間による高揚感や恋愛における密度の高め方が非常にうまい印象を受けた。いわゆる"生まれながらにして何かハンデを持つ主人公が周囲との折り合いの中でジブンの生き甲斐を採掘して人生に輝きを取り戻す"人生讃美の側面が非常に濃い作家性に思う。また主人公がああなってしまう後の世界観も綿密に描いたりブツ切りせず世界観の構築の仕方に好感をおぼえる。病状のXPに関して多くの人に知ってもらいたい非常に役者の微細な演技共に秀逸な作品でした。
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