千紗

ダンケルクの千紗のレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
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空と海の美しい蒼が映える暗闇と影、あと重油の黒によるコントラストが印象的でした。青い空の開放感と青い海の閉塞感が良き。

言葉数の少なさと行間の読み合いも、詳しい描写の少ない登場人物たちの背景を深読みさせてくれたようにおもう。民間船で兵士の救出に向かった父親の、丸腰で戦地に乗り込む責任感とか、ともだち?を蔑ろにされた息子が怯えるパイロットについた嘘とか、生き延びるために仲間を欺くことはしてもいざ生き延びて帰れば非国民だと後ろ指を差されやしまいかと国民からの歓迎の言葉に疑心暗鬼な若い兵士とか、語られないエピソードをつい思い描いてしまう台詞がたくさんでした。あと、盲目の老人が帰還兵に毛布を渡すシーンも。

兵士の救出シーンの盛り上がりと、国民の歓迎シーンで幕を閉じること、もちろんダイナモ作戦の奇跡も相まって、感動のフィナーレ感はあるけど、助からない兵士たちや、撤退を支援したパイロットが最後捕虜になったり、敵地に残ることになった上官?とかも描かれている。のに、たぶんさらりとしてるから全体的に好印象すぎるような気がしてしまうのかも。
 これに限らずどんな作品を観ても、戦地に赴かざるを得なかった人たちが収めた結果的な武功を手放しで賞賛するものだとは思わないけど。見方によってそう取られてしまうのは大変もったいない。過去の全体像を語る歴史と、そこで生きていた退っ引きならぬ生き様(解釈にフィクションが含まれれど)を示した人々は重なり合って見えてしまうから、難しいんだけど…。

小さい画面でももちろん迫力があってクリストファー・ノーラン👏って気持ちになるけどこれは映画館で観たかったなあ。
千紗

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