ヒムロ

ダンケルクのヒムロのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
4.5
第二次世界大戦下のフランス北端の街ダンケルクの浜辺には、英仏連合軍40万人がドイツ軍に追い詰められていた。
彼らを救うべく民間船も総動員で史上最大の撤退作戦が決行される。
果たして彼らの内どれだけが、祖国へと帰ることができるのだろうか。


実際に起こったダンケルク大撤退を、陸海空の3つの視点から描いた映画。

一応登場人物には名前は設定されているっぽいがほとんど呼ばれることもなく、誰が主人公という明確な表現もない。
誰もが名もなき兵士・民間人であり、英雄譚では決してないリアルな戦場の実情を描いているのは撤退戦をテーマにしているところからも明らか。
どんなに時間が経っても苦しい状況は決して好転せず、絶望の中、簡単に人が死んでいく。
しかしその中で生き残って国へ帰ろうとする、そんな普通の人間の生き様が力強く描かれている。

そして撤退することが映画の目的なのはもちろんなのだが、現実問題では撤退して帰ることは生死でいえば勝ちだが戦争的には敗北に等しい。
もしくは恥をわざわざ国へ持って帰ってくるような物なのだろう。
生きて帰れた兵士たちの苦しそうな表情が最も心に刺さる部分でもあった。

ドイツ兵を全く描かずにこの絶望感を出してくるのも脚本の妙だと感じる。
BGMも非常に絶望感と逼迫感を煽ってくる。

誰もが等しく普通であり、また誰もが英雄である。
撤退戦だからこそ見える苦しい現実が重く突き刺さる映画だった。
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