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ダンケルクのayaのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
4.4
『インターステラー』を自宅で観たときに劇場に行かなかったことを一生分くらい後悔したので、
これは絶対に映画館で観る!という意気込みで公開を待っていました。

106分って監督にしては短尺じゃない?と思いましたが、全然そんなことなかったです。私が甘かった。
かなり内容のカロリーが高いので、これ以上続けられたら体がもたない。

「インターステラー」とまた違った方向にスケールが壮大で、これどうやって撮ってんのよ?いくらかかってんのよ?となるノーラン節の連続。
個人的にはこの現物主義(CGに頼らないとか)とそれに伴うブルジョワ感(アナログはアナログでお金がかかる)もノーラン作品の好きなところなのですが、特有の映画哲学もぎっちり詰まっていて、
『焦点を絞って、伝えたいことはリアル以上にリアルに』
『細部はこだわるけど雰囲気も大事』
『暗くて重いのに超絶ドラマティック』
『過剰なまでのヒューマニズムとあざといくらいのスポットライト』
『交錯する時間と空間と運命』
『でも映画として、やるべきところはきっちり』
みたいな、もう、はい、そうです、監督ありがとうございますご馳走様です、という状態でした。
なんていうかもうこれは、好みの話だと思うの…ただ私のツボだ、というだけ。
クリエイティビティに対する好み。

脚本も好きです。
少ない台詞の入れ方がすごく効果的。
首相演説は有名だけど、新聞で読むのと戦場を知ってて聞くのとでは感じ方が随分違うはず。
好きなシーンは、ファーストカットとラストカット。入れ方が最高です。
こんなに緻密なのに詩的なノーラン、ほんと素敵。

あの人は何次元もの軸の上で映画を作る人です。すごい。
セオリーやら需要やらっていうのに削り取られることのない創造への情熱。
創造欲への服従ではなく、それをうまく飼い慣らしてる感じが好きです。

あと、ハンス・ジマーの、わかりやすく煽ってくるBGMと計算された音響効果がずるい。
うざいくらいの劇伴でしたので、おそらくかなり意図されてる。
そのように構築されているのはわかっているのですが、緊張感と閉塞感に体力を奪われます。
最後までずっと考えるのは、
『"私たち"生き残れるのかしら』。

広報が「新しい映像体験」とこの作品の魅力を打ち出していますが、確かにそうかもしれません。"アトラクション"とも"共有"とも違う、臨場感ともまた異なる時間だったと思います。

絶対に劇場で観ないと損です(しつこい)。
ああ、IMAXの劇場があんなはるか遠くなければ行くのに…

追記 : パンフレット読み応えあります、ぜひ。
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