バミューダサイキックビーム

ダンケルクのバミューダサイキックビームのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
3.7
塩の花や桟橋の古ぼけたペンキの虚しい白と消耗した兵士の疲労の色合いの相乗作用が醸す絶望の味が苦い!

チネチッタライブサウンドで観賞。
耳元で聴こえる様な銃声と爆撃の音からは焼けた金属の匂いを、CG ではない船や戦闘機からはその重さを感じた。
また死体ですら出られない絶望のダンケルク海岸を接点にトミー、ドーソン、ファリアの抑えた演技がさらにそこに重石を乗せてくる。

観賞前には少し不安だったノーラン監督らしい映画的多層構造。
しかし、それは戦争の空気の重苦しさを失わせないどころかそれ以上にいや増して見せてくる。
陸海空とその全てで悲劇が繰り広げられるので息つく暇がない。
そんな張りつめたシーンと希望の連続とバランスが時計の音とシンクロして高まりかつ弛む事でその後の感動がより際立ってくる。

ただ監督の描いた戦争の暴力は何処か“上品“で“清潔“に感じもする。この映画には戦場にある筈の命が事切れる瞬間がまるでない。
ここは暴力からくる地獄絵図を得意とするメル・ギブソンとは正反対だ。
ギブソン監督の映画が戦争経験者の書いたノンフィクションなら、此方からは監督の文法に則って緻密かつ冷静に執筆された歴史小説の趣。
また監督の心の底のジョンブル魂と大局的視点のせいかその“純化された“というイメージは強くなる。

このダイナモ作戦が歴史上ユニークで極端な事例だったとしても、この作品が放つ冷たい海水みたいな重圧と悲壮感とセットになった希望は“玉砕“という言葉の使われ方の安易さ薄らサムさを知らしめてくれた。
何故かジャムパンが食べたくなりました(´・ω・`)。