シソウメ

ダンケルクのシソウメのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
4.1
皆様の感想がある一点に集中しているようだが、敢えて同じことを書こう。

『ダンケルク』は「臨場感」や「体感」という言葉を表現する映画作品としてはピカイチの仕上がりだ。

この映画は精神的、視覚的に「VR化」に成功している。
「VR」といえば『ハードコア』がFPS視点での挑戦的な作品として製作されたが、『ダンケルク』はあくまでも視聴者の視点(TPS視点)というのが存在する。
主人公を客観的に見せる視点であり、なおかつ音に拘った演出や余計な光をあまり使わない撮影方法が『体感』する映画として昇華させている。

ノーランのすごいところはそれだけではない、「戦争映画」に対して新しい切り口で向き合ったと共に「戦争の恐ろしさ」を、血や凄惨な表現を極力使わずに表現しているのは本当に素晴らしい。

また、3者の視点から戦場が描かれているが、かなりドキュメントタッチである。
にも拘らずエンタテイメントとして成立しているくらいキャラクターのツボを心得た演出が光る。
少し誇張した部分もあるが、そこ以外泥臭いのだから受け入れよう。

ポイントとなるのは戦争の「悲惨さ」を訴えるわけではなく「恐ろしさ」を表現しているということ。
戦争の悲惨さを映像としてカットしているため、普段そういった作品を避ける方にも観賞できるくらいライトになっている。
それによって批判もあるとは思うが、「戦争」という、向き合うのにエネルギーが必要で敬遠されがちなものをここまで飲み込みやすくして、しっかりと恐怖を感じさせているこの作品を評価したいと思う。

トム・ハーディはしゃべらなかったり、顔がちゃんと映らなかったりだけどいい役者だ(笑)
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