ものすごく臨場感のある、戦争昔話。
映画を疑似体験装置として突き詰めて、こうして作品化するという試みは本当に凄い事だと思います。映画産業が衰退の危機を迎えている今ですし、何かしらの賞に値する素晴らしい成功だとも思います。
でもこの作品のアプローチで、史実を取り上げる事には、なんだかとても危険なものを感じます。
ノーラン監督の作品は好きです。でもそれは今までの作品がフィクションだったからなのかもしれません。これまでのように寓話的なストーリーを描くには、この作品のテイストはあまりにリアル過ぎます。そして、リアルを描くには、この監督の語り口はあまりにシンプル過ぎる気がします。まるでラストに読み上げられる新聞記事のようで、とても気持ちの悪いものが残ります。
この人には、出来るだけ早く元の、あのフィクションの世界に帰って欲しいです。