もっちゃん

ダンケルクのもっちゃんのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
3.5
戦争を題材にした映画はいくつかみてきたが、これまで観てきた映画は、人間にスポットライトが当たっていたように思う。
戦争という極限状態の舞台、そこに生きる人間ドラマが描かれていた。
(ぱっと思いつくかぎりでは『プライベート・ライアン』『シンドラーのリスト』『ライフイズビューティフル』『アメリカン・スナイパー』など)

それに対し、本作は戦争や戦闘そのものを直接表現しようという意欲を感じた。
上に挙げた作品が劇中に登場する人物に感情移入することで、戦争の悲惨さを追体験するというよなイメージならば、『ダンケルク』は観客自身が登場人物になって戦争の恐怖、生と死の狭間の中にいる感覚になる。そんなイメージ。

印象に残ったシーンは、船の中で味方の救出を待つも敵兵士に外から銃を打たれ、鋼鉄の船体を弾丸が貫通して登場人物たちを襲うシーン。
銃の音といえば、"バン!"という擬音が代表的だが、作中で弾丸と船体、金属と金属が生み出す音は「チュイン、チュイン」という、文字にするとスズメのさえずりと間違えてしまいそうな音。
密室の中で外から銃で打たれるというシチュエーションに加え、聞き慣れない音に恐怖を覚えるシーンだった。

『ダークナイト』や『メメント』『インセプション』『インターステラー』のクリストファー・ノーラン監督を期待している方にとっては、『ダンケルク』が物語を楽しむ構造ではないので期待外れになるかもしれない。
しかし、戦争映画におけるリアリティという点においてオリジナリティはあったと思うので、監督の新たな一面を楽しめるという点では期待を良い意味で裏切ってくれたのではないか。
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