Jean

映画 聲の形のJeanのネタバレレビュー・内容・結末

映画 聲の形(2016年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

2017.06.26 日本語視聴



“壊れたものは取り戻せるのか”


いじめやそのせいで離れ離れになったことで
うまれた溝、バラバラになってしまった何か

戻すためには
互いの歩み寄りしか方法がないような気がする


いじめた子は自分のその消えることのない罪を認め、
抱えて、苦しんで、後悔して、
もう1度やり直す、過去を背負いながら

いじめられた子は
いじめられたことでできた心の傷と
またいじめられるんじゃないかという怖さ、
あの時の苦しさと今も痛む癒えない傷を抱えて
過去を思い出しながら

ただ見ているしかできなかった子は
自分の愚かさと弱さと後悔と無力さを
今も抱えながら

そんなそれぞれの自分の弱さと過去を
向き合いながら、歩み寄るしかないのだと思う

石田くんがしょうこに伝えた

君に生きるの手伝ってほしい

という言葉は過去を背負って、
今を生きようとしている

壊れたものは元どうりにはならないけれど、
新しく創り出すことができる

そう言っている気がする


いじめと言えばそう一括りにできてしまう
石田くんの行動はただただ
言葉を上手く伝えられない小学生のように
私には見えたし、またしょうこも


いじめは
いじめた方が悪いだとか
いじめられた方が悪いだとかって
誰かを悪として、善として分けようとするけれど、
私はみんなが悪いと思ってしまう

いじめた子は
いじめなんてするべきじゃないと思う
当たり前だけど、もっともっと豊かな気持ちで
相手と自分の愚かさを見つめないといけない

いじめられた子は
受け流されるだけじゃダメだと思う
助けを求め、辛いと誰かに叫ぶ
相手の子に思いをぶつける
私はこんなにも辛いんだ!悲しんだ!
怖いんだ!死にたくなってしまうんだ!
それでもいじめるのか!って叫ばないと
いけないんだと思う

私もそうだっけれど、
誰1人として自分の心を、思いを
言葉にしないで伝えられる人なんていないのだから

見ていただけの子は
やっぱり、その子を救わないといけないと思う
どんな些細なことでもいい
声をかける、側にいる、先生に伝える
友達に呼びかける
みんなの前じゃなくていいから
手を差し伸べなければいけない

しょうこが佐原さんにまた会いたいと言ったのは
やっぱり佐原さんが彼女を救おうと
手を差し伸べたあの行動があったからだと思う

佐原さんのあの行動が
しょうこの励みとなったんだと私は感じている

もっと伝えなければいけない
この豊かな思いを言葉にして

人はぶつかり傷つけ合いながら
見えない何かを築き上げるのだろう




“変えられない壁”

石田くんとしょうには変えられない壁がある

石田くんはしょうこをいじめたという事実

しょうこは耳が聞こえないという事実

2つの事実は彼らの前に壁となって
立ちはだかって、彼らを苦しめる

だけれど、その壁を超えた時
その壁を乗り越えた2人にしか見えない世界がある

壁は壊すのではなく、
そこにそのままあり続けるもの

私の言う壁は
彼らの代え難い事実であるのだから

だから壊してはいけないのだ

その壁は自分自身でもあり、
言い換えれば自らの一部でもある

人は常に自分の壁というものを持って生きるのだ

変えられない壁は乗り越えればいい

時間が解決することもあれば、
心が解決してくれる時もある
その2つが解決してくれないのであれば
言葉を声にして伝えるしかないのかもしれない


壁は十人十色で、
またそれの超え方も数え切れない



"子どもの全てが素晴らしいか"

多くの大人は子供のころに戻りたいという

私もその1人

けれど、最近思う

子供の全てが羨ましいだろうか?
私はそうは思わない

子供である彼らは
時に残酷でつまらなくて、無意味で、狭い

子供の頃にしか感じられない感覚というものを
私は羨ましく思うけれど、
この映画を見ると子供を羨む気持ちが
薄れる

なんと無知で不器用で
人を愛でることができず、
その仕方を知りもしない

そんな風に感じてしまう


子供の残酷な部分を
成長した私は欲しいとは思えない

けれど、そんな部分も含めて子供なのだと思う

成長した石田くんだからこそ
しょうこに対しての懺悔の償いきれないと思う
気持ちを持てたのだから

成長して大人になるということも
一部を除けば大切なことなのだ





人がその心のどこかに持つ
悲しい過去や辛い現在、変えられないものを
声という形にしていかなければならないのだと思う

言葉を
口から伝える者もいれば
手から伝える者もいる

声の形は様々で目に見えないようだけれど、
実はみんなその形をいつもいつも見ている

目をそらすことはできない
声は形となっているのだから
Jean

Jean