ringrintaro

映画 聲の形のringrintaroのレビュー・感想・評価

映画 聲の形(2016年製作の映画)
4.0
全ての愚か者、つまりは全ての人間に見て欲しい映画です。
◆ストーリー
小学校でガキ大将的なキャラの主人公石田将也のクラスに、聾唖の少女、西宮硝子が転校してくる。
ノートを広げての筆談、補聴器や手話などは、イタズラ好きな将也の好奇心をくすぐるが、硝子の態度が気に入らない将也の行動は次第にイジメに発展していく。それが保護者を通じて教師の知るところとなると、イジメに積極的に加担した筈のクラスメイトたちは一転してイジメの対象を将也に切り替える。
明るく元気なガキ大将だった将也は、それをきっかけにして身を隠すようにして生きるようになった。
出会いから五年後、高校生となった将也は硝子と再会し、練習した手話で何とかコミュニケーションを取り、罪滅ぼしをそようとするが…

という感じ。
あらすじはごく簡単に書いてるけど、この作品が素晴らしいのは、将也と硝子二人の関係だけではなく周囲の同級生達も含めた人間の成長を描いた描写力だろう。イジメの描写などリアリティーあって見ていて辛いが、彼らは全てがどこかしら欠落しており、部分的には反目しながらも、それでも互いに必要として関係を深めて行く様もきちんと過不足なく描いてると思う。
硝子の聾唖という欠落は象徴的だが、将也のように極端な性格の持ち主であったり、或いは非常なヤキモチ焼きで敵と味方をハッキリと区別してしまったり、自分を良く見せるために必死だったり、優しいけれど弱かったり、急に馴れ馴れしく寄り添ったり、弱い存在であるからこそ必要以上に人に嫌われないようにしたり、という誰にでもある欠落というものを非常に上手く描写しているし、その中で当初特別に思えた聾唖という欠落も相対化されて「当たり前のもの」に見えてくる。
ただそのようなリアリティーのある描写なのに、現金を燃やしたり人の顔に貼りついた✖︎であったり、という演出はすんなり見る事が出来なかった。しかしまあ、それはそれとして時間の経過や個々人の様々な心の動きが129分に綺麗に収まってる。
素晴らしいと思う。

2016年は邦画の当たり年だと、映画好きの人の言葉を何度か見かけた。
僕が当時映画館で見ただけでも『怒り』、『長い言い訳』、『君の名は。』、『この世界の片隅に』は素晴らしかった。そしてこの『聲の形』も2016年。
この作品も素晴らしい。

さて、「全ての愚か者、つまりは全ての人間に見て欲しい映画」と書いた。
この映画に描かれているのは、色々な形の愚かさです。人間は愚かだからこそ、それを認めて乗り越えようとする姿にこそが素晴らしいのだと思う。

かなり泣きましたw
ringrintaro

ringrintaro