うめ

ウィッチのうめのネタバレレビュー・内容・結末

ウィッチ(2015年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

17世紀のニューイングランド、移民の家族は宗教上の違いから村を出た。

辿り着いたのは深い森の入り口。荒れた大地では家族分の食料を手に入れることすら危うい。世界と切り離され、信仰と家族愛のみが彼らの光であった。

ある日、末っ子のサムが消えた。
一瞬、目を閉じた隙に、暖かなおくるみだけを残して。

加速する不安と狂気、潰されるような魔女の気配。家族は瞬く間に崩壊していく。





とっても怖かったです!!
一人で観てたから何度も止めそうになった

グロいとかびっくりさせるとか、そんな怖さはなくて、
何か怖いことが起こっているっていうのを登場人物の表情でまず語るのですね

その、むしろゆっくりなペースがじわりじわり恐怖を呼ぶんです

あと、全く救われないというか
完膚無きまでに落とされる
嫌なことが起こっているのが分かっているけど止められないみたいな


どこまでも嫌な動物たちの目と、暗い暗い森、
絵としては何も過剰ではないのに、凝縮された陰鬱さと不気味さにどっぷりと浸れます


お話としては、想像とは少し違いました、主人公が魔女と疑われ、バッドエンド的なのを想像してたんだけど 、結果主人公以外バッドエンド、主人公は魔女の仲間入り?みたいな。結局魔女やったん?みたいなよくわからない感じで終わっちゃいました、、

ストーリーを別にして、その時代の日常の様子がすごくリアルで興味深かったです
キリスト教が生活に与えていた影響に驚きます(とくに世間から離れた家族にとっては拠り所、生活といっても過言でない)食卓の雰囲気が悪いから、ちょっと聖書読んで明るくしようっての は始めて知る感覚でした
なんというか、辛いことが多いと頼らざるおえないというか、生きるのに軸が必要なのかなとか、そんな風に思いました。

あと、怖かったのが、お母さんがイングランドに帰りたいって言ったところ。そうか、この家族は移民として別の大陸に渡って、しかもまた人里離れた地にいるのだ。雲の上にいるような、いつ踏み抜いてもおかしくないそんな底知れぬ怖さですね

そのころの世界はまだ日常が恐怖に満ちていたのかもしれないです。音のない、闇に落とされる夜を想像するだけで怖い。未知の病、野生動物、貧しさ、明日家族が食べれる物があるかも、全てが分からないし、怯えるしかない。テレビは楽しく、夜は明るく、人生は軽やかに、そんな現代とは状況がまるっきり違っていたでしょう。
誰かを魔女として目の前に原因を作ることで、そんな恐怖に蓋をし克服しようとしたのでしょうか。


ニューイングランドで当時魔女裁判があって、幾人も処刑されたのは事実みたいですね。ピューリタンの理想郷としてやって来た移民達だったけど、実際はイギリスの支配から逃れられず、また貧しさにあえぐこととなった。そんなこんなが原因の集団ヒステリーが原因だとか(インターネットの情報です)
実際は村規模で魔女裁判が行われて十何人が処刑されたらしいのですが、本作ではひとつの家族の中で完結させたことによって、より静謐で浮世離れた世界観を生み出せたのだと思います。

現代の日本に住む私からすると魔女なんていないと断言できます。
ただ、当時、人々が本気で魔女だなんだの言った、その気持ちが少し見えるような、そんな気持ちになれました。

ファンタジーホラーなんだけど、実際の歴史を感じられる、心に残る作品だと思います。ぜひ見てみてください。
うめ

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