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夏美のホタルのgintaruのネタバレレビュー・内容・結末

夏美のホタル(2015年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

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いいところを先に言っておこう。千葉の田舎の懐かしさを感じさせるロケはよかった。川の情景も美しい。いすみ鉄道、棚田、雑貨店、レトロなカメラにバイクと道具は揃っていた。
役者の演技にも不満はなかった(子役を除き)。皆それぞれがいい味を出していた。ベテラン陣は言わずもがな、有村もよかったし、工藤もなかなかいい演技をするじゃないかと思った。
ああ、それなのに…。では、あとはダメ出し。
まず、冒頭の二人のベッドからの寝起きシーンが興ざめ。エロくもないし、美しくもない。二人がすでに恋人関係ということを表すためなのだろうが、それにしてもなんじゃこれはという中途半端感。服着たままというのもリアリティに欠ける。いやな予感の始まり。
田舎へのバイクでのショートトリップは期待したが、そんなにシーンが多くない。最初テントに泊まってたのに、え、荷物どうやって積んだのと疑問が湧き起こる
次に夏美が雑貨屋を訪れるシーン、微妙にカメラが動く。最初の見ずらい感覚の始まり。実はこの映画、ほとんどのシーンを手持ちで撮影してるようで、静止情景でも微妙に手振れしてて気持ち悪くなる。多くの人がそれを指摘しているようだ。
それは置いといても、この場面、夏美の動きに合わせてカメラが動くわけだが、これだとふつう店の中から誰かがずっと観察していたのかということを思わせるのだが、そうではない。ここにまず映画のセオリーを知らないのかという疑念が湧いてきた。
夏美と父の関係もよくわからない。昔レーサーをやってたらしいが、早逝したのはそれによる事故とかが理由ではない。夏美の持ってる古いフィルムカメラも父の形見というわけではなさそうだ。その辺の設定と描写がイマイチ不明である。
まあ、そういう登場人物の背景についてはどれも説明不足な感じがして入り込めない。地蔵さんと妻や息子との関係もそうだし、仏師の過去の家族関係もよくわからず、なぜ今千葉の片田舎で仏師をやってるのかはわからないまま。
最後の方で電車で帰る慎吾を見送る夏美に慎吾が別れようと切り出して、その後夏美が電車をバイクで追いかけるシーンというのもありがちだなあと思っただけ。ホームでもプラットホームの端まで走って追いかけるし。ちょっと演出が陳腐すぎると思わざるを得なかった。さらにそれが何の伏線やラストシーンにもなってないのがさらに残念なところ。
そしてその後いきなり地蔵さんのお葬式シーンになって、ちゃんと慎吾もあいさつに来てるし。
それでさらにいきなり3年後のシーンになって夏美はもうお腹の中に赤ちゃんがいるというラスト。新潟ナンバーの車だから結局慎吾が新潟の実家の酒蔵を継ぎ、そこの嫁に収まったということがわかる。だけど夏美はプロの写真家になったみたいなんだよねえ。慎吾が言ってるからわかるんだけど。ふつうそれだったら、この千葉の田舎で素晴らしい写真を撮り、それがコンクールで優勝したからとかのサクセスストーリーがあったのかと思わせるが、そういうオチはない。
終わりに行くにつれ、期待感がどんどんしぼんでいき、話も描き切れず中途半端になってしまったという感じだった。
とにかくひと夏の田舎の人との出会いのふれあいドラマとしてぼおっと見る分には情景は美しいのでいいかもしれないが、それで誰かが人間的に成長するとか感動的なラストがあるとかではないので期待外れだった。
最後にもう一度。カメラワークひどすぎ。狙ってるのかもしれないが、失敗です。
ああ、あとタイトルにホタルってある割に、火垂るの墓のような美しいホタルの乱舞するシーンとかはない。途中チョロっとホタルのシーン出るから、ああラストで美しいホタルのシーンの伏線になるのかなとも思ってたけど、そういうのもない。
いろいろツッコミどころ、疑問点の出てくる映画だった。
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