妻の軽佻浮薄に苦しむ夫が、手の込んだ復讐を企てる愛憎劇。
薬局からカフェスタンド、そして雑貨販売までの機能を備えた24時間営業の店が舞台となっているほか、マリブビーチの風景も登場する。
冒頭でタイトルの由来をひとくさり、本編では事件発生後に登場する刑事の色仕掛な捜査手法は「容疑者の人権無視」も甚だしく、その見切り発車ぶりに苦笑するしかない。
毒婦役のオードリー・トッターはノワール映画の常連、アイダ・ルピノとグロリア・グレアムの間を取ったようなファニーフェイスだ。
主演のリチャード・ベースハートはどこかで観た顔と思ったら、『道』を含むフェリーニ映画に何本か出ている俳優。
「アメリカ人なのになぜ」と思ったが、一人目の妻がイタリア人女優だった縁らしい(ヴァレンティナ・コルテーゼ)。
ちなみにヴァレンティナもフェリーニ映画に出演、『魂のジュリエッタ』では幾層もの白いチュールで喉まで埋まったキッチュなドレスに身を包み、芝生の庭へ現れる有閑マダム役だった。
加えて踊らないシド・チャリシーも登場…、彼女の「主演級ミュージカル・スター」としてのキャリアが花開いたのはノワール映画全盛期以降のようで、世代の差から30年代のスターと逆コースを辿っているのが面白い。