あ

天使の影のあのレビュー・感想・評価

天使の影(1976年製作の映画)
5.0
シーンと無関係の陽気な音楽を唐突に挟む独特な演出が、引きで映し出される孤独な人々に不思議とマッチして、本当に気持ちが沈んだ時に周りの足音が自分と無関係に通り過ぎていく時の、言いようもない孤独のような感じが出ていたと思います。シュミットの作品を観るのはこれで二作目なのでなんとも言えませんが、こういう適当にやってるのか真面目にやってるのかよくわからないところは割と好きです。

本作は劇的な台詞回しもあり、観やすい映画とはまったく言えないと思います。しかし、ファスビンダーの誰も救われないが、誰の孤独も受け止める包容力を、監督のシュミットが街を華麗に使って受け止めた本作は間違いなく最高級の名作だと思いました。特にカーフェンが、ユダヤ人を虐殺し、今はユダヤ人にこき使われているファシストの父へ、ユダヤ人の不動産王が両親の仇を取るために選ばれ、一人静かにブランコに乗って宴の後に取り残されるシーンや、選ばれなかったかつての娼婦仲間たちの脇を、延々と答えを探すように歩くシーンには、言いようもない孤独を感じました。本当に素晴らしかったです。

選ばれた者と選ばれなかった者の違いとはなんなのか?それに選ばれた者すら答えを出せないが故に、皆破滅していくのでしょう。その破滅の中でも、劇中のセリフと同じく、死が一番贅沢に見えるところがなんとも重苦しかったです。
あ