囚人13号

天使の影の囚人13号のレビュー・感想・評価

天使の影(1976年製作の映画)
3.0
演劇を映画に定着させるという行為に孕む困難に敗北した例。
カットも俳優の動線を追って割られているのだが、カメラを介して大仰な台詞をスクリーンに投影する手間に見合った価値を見出せなかった。冒頭のフィルム・ダールにまで退化した画面連鎖を見せられても台詞とのアンバランスで一番避けられるべき「高尚」になってしまう。

何とか抑揚を生み出そうと猫を殺したり、卑猥な台詞を発したり、車内と屋内で(長台詞の)長回しを試みたりしているが、どれも映画を根本から揺るがすほどの絶大な力を波及させるには至っていない。

しかしその分カメラワークが滅茶苦茶に良かった。やっていることの小ささに反してカメラ/構図の突き抜け具合が独り歩きしていく映画はそう珍しくもないのだけど、本作に関してはロケーションが素晴らしすぎる。
倒れ込む女とそれを上から支える男の図は、抑圧不能な力が人間の外見から徐々に内面まで蝕んでいく歪な退廃美を好むシュミットらしい。

ヒモ生活から同性愛者としてリンチにあい、挙句冤罪で投獄を命じられるファスビンダーに救い無し。
囚人13号

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