ネズミツオ

死霊館 エンフィールド事件のネズミツオのレビュー・感想・評価

4.6
恐い場所に近寄る描写を執拗に追う引っ張り具合。こんな長回しされたらこちらの心臓が耐えられない!静かに忍び寄る悪霊の影。ヌッ!と出てくるおどろおどろしさ。西洋人には表現できない、背筋がゾクゾクする言い知れない恐怖感を絶妙なタイミングで叩き込んで来るジェイムズ・ワン監督。ジャパニーズホラー同様、目に見えぬスリルを観客に手探りさせる手法は東洋人ならではの感覚。

元祖ゴーストバスターなウォーレン夫妻が命がけで悪霊退治に挑む。信仰心、感受性の強さが大きな武器。人間の弱みにつけ込む悪霊が怯んでしまう強い夫婦愛がテーマになっているのもドラマチックな深みを与えています。

冒頭「悪魔の棲む家」で有名なアミティヴィルの惨劇を映し出し、前作「死霊館」とスピンオフの「アナベル」をも噛ませてくる目まぐるしい伏線の数々。70年代に一世を風靡したオカルト映画の恐ろしさをそのままに、過去の名作に恥じない実話ベースの説得力と恐さの中に時折挿入されるクールなヴィジュアル!影が◌◌と一体化する所なんてヒーロー映画のようなカッコ良さがあるじゃないですか!闇の魔物に弄ばれるホジソン家はファンハウスのような賑やかさ。当人だけでなく、第三者もその怪異を目撃している所が正に「事件」扱いとして絵空事では済まされないリアリティを生んでいると思います。

シリーズ通して魅力的な70'sファッションとレトロな車、小物に至るまで徹底した時代考証も見所の一つ。TVのリモコンがデカい!

「死霊伝説」「ポルターガイスト」「エルム街の悪夢」を彷彿とさせるイメージを盛り込みながら、ホラー慣れしたファンの心臓をも一突きさせるショック効果の連鎖!見終わった後は魂が抜けたような満足感ある疲労を感じるトンデモない王道ホラーに仕上がっています。

映倫区分【PG-12】男子中学生がフードを深く被り、落ち着かない様子でショックを楽しんでいるかと思えば、女性3人組が手を繋ぎ団子になってトイレへ駆け込む・・・2016年にこんなストレートな観客のリアクションが見られるとは思いもしませんでした。カップルが多かったですが、皆青ざめた顔で「こ、恐かった!」と。子供だましのジャンルとは言わせない最恐のホラー映画を送り込んできたジェイムズ・ワンの才能にただただ感心させられました。

地獄めぐり!死ぬ気で観に行け!

【2016年7月9日】公開初日、109シネマズ湘南で鑑賞。
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