りょうじん

ロープ/戦場の生命線のりょうじんのネタバレレビュー・内容・結末

ロープ/戦場の生命線(2015年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

井戸に投げ込まれた死体を引き上げたくても、ロープがない。

国際援助団体「国境なき水と衛生管理団」のメンバーは、地雷が埋まりと武装集団が徘徊する危険地帯を、ロープを探して右往左往する。
それだけの話。
でも、たったそれだけなのに、映し出される戦争直後のバルカン半島のどこかの町の現実、日常は衝撃的で悲惨だ。

祖父に預けられたという少年と出会い、彼の家にロープを取りに行く。どこにもロープを見つけられずというか、あるけど渡してもらえない状況から、彼の家にあるロープを貰いに行ったが、そこは爆破され燃やされた無人の町。主人公の男性とソフィという新人女性が少年の家にボールを取りに行くが、居間は隣人によりガスで爆破され、別の場所へ逃げたと聞いていた両親は首を吊っていた。
平和な時は、隣人のパートナーがムスリムだろうとセルビア人だろうと関係ないが、戦争となったらそうはいかない。それだけの事だ。
主人公はそう言うが、そんなくるりと手のひらを返せるのか。もともと、心の奥底にあった小さなシミとして、宗教の違いや人種の違いがあって、上手く行かない事が続いた時、どうしても自分の力で解決が出来ない時、もしくは考える事を放棄した時、手っ取り早い解決法であり、安直な回答として、近くの異分子の排除と攻撃があるのかもしれない。

少年の両親が首を吊っていたロープ

それを手に入れて、井戸に戻るが、途中まで釣り上げたところで、国連軍が来て、管轄が地元に戻ったので、死体を移動させるには地域の裁判官の許可がいるとされ、再び死体は井戸に投げ戻される。

水は地域住民にとって必須のものなのに、水よりも和平協定の取り決め通りに許可を取れと。
これまでの、ロープの経緯を知っているだけに、イラッ!としたけど、こういうものなのかもしれないな、なんて思ってしまった。

重いテーマや展開なのに、登場人物たちのやり取りが笑えるものが多くて、もうこんな重い映画見ていられない!とはならずに、最後まで見れた。
この軽快なやり取りや、展開がとても良かった。

あと、現地の人達の心の荒み具合というか、優しさがなくて、すぐ暴力となるのが辛い。
りょうじん

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