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バース・オブ・ネイションのxyuchanxのレビュー・感想・評価

バース・オブ・ネイション(2016年製作の映画)
3.6
選ばれし、神の子

「Forrest Gump」がキッカケで黒人奴隷に関する史実をもう少し辿り直し。

農場で綿花摘みに従事させられている奴隷の子ナットは、奉公先の奥さんに見込まれ、聖書を教えられ、ついには近隣の奴隷たちに説教をするまでに。神の子が知恵の実を得た。

彼の比較的恵まれた環境と違い、近隣の奴隷たちは家畜小屋みたいな奴隷の寝床や、日々の強制労働や鞭打ち、歯を折られたりと虐げられており、女性は性奴隷も当たり前、ついには自らの妻も、仲間の妻も、集団レイプと強制暴行の犠牲になり、ナット自身もとうとう主人に反抗し鞭打ちに処されてしまう。

ユダの裏切り、”剣を取るものは剣で滅びる”、甘過ぎにみえる計画、そしてまさに「Forrest Gump」の生家のような庭の木々に実る“Strange Fruits”。

・Billie Holidayによる”Strange Fruits”の歌詞はこちらで。
https://note.com/artoday/n/ncc45fdbcd584

本作はネイト・パーカー監督、主演。1915年の同名映画「國民の創生」への反歌的な作品として作られている。南北戦争で南軍が負け、黒人が選挙権を得るわけだが、監督のグリフィスは反感を抱いており、悪さをする黒人たちを退治するKKKを賛歌する映画として制作。結果的に、下火になっていたKKKを復活させ、その後多くの黒人たちが犠牲になった。

本作はウィルソン大統領の「The Birth of a Nation」という言葉を、”黒人も含む”本来の意図に戻そうとする意図を持つ。wikiにある事件(12年後に自殺?)の真相は判断できない。

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さて、違和感があった点の幾つかはやはり脚色だったようで、余計に主人公の行動に合点がいく。

・日食は事実だが計画はかなり時間がかけられていた
・ナットの妻は先に死んでる、さもなくば無事で居られるわけがない
・農場主サムュエルは病死、奴隷にとっては悪い予兆でしかない
・仲間は全滅ではなく徐々に抜けていった
・裏切りによる密告は、ひとりだけではなかったはず
・裏切り者が南北戦争に、の描写もおそらく脚色

南北戦争がもたらした国の誕生。あの頃から本質的に変われていないのか、徐々に変わってきたと見るべきなのか、トランプという劇薬とBLMにより今まさに成熟しようとしているのか。まだ結末は見えないが、信じるしかない。
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