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シング・ストリート 未来へのうたのEditingTellUsのレビュー・感想・評価

3.7
ダブリンに住む若者たちの音楽でつながる青春物語

「夢を捨てたやつに魅力はない。Futurismを掲げる若者には心を揺さぶる何かがある。」

 「Begin Again」の監督が送る、ミュージカルコメディドラマ。彼の作る作品にはさまざまな種類の音楽が彩っている。「Begin Again」でもそうだったように、未来へつながる曲から、失恋を嘲笑うような曲、若者のばか曲など。どの楽曲もメッセージ性が強く、わかりやすい歌詞で表現されている。この映画を見たほとんどの人が、サウンドトラックを手に取るように、音楽が作品の軸となって、それぞれの曲に心が共鳴する感覚を味わえる。
 楽曲のクオリティもそうだが、なによりJohn Carney監督の作品は楽曲の音質が素晴らしい。音質といっても音がいいというわけではなく、音の質感にこだわった表現方法に圧巻。バンド演奏の際の乾いたスネアの音。部屋で曲を書くアコギの弦と指の擦れる音。それらの音の質によって、見る側の視点が変わってくる。映画空間に入ったような感覚や、バンド演奏をライブで見ている感覚、ストリートで歌っている人を横目に見る感覚。その感覚がとても自然に展開し、映画体験をもたらす。80'sのブリティッシュロックに載せた青春物語が心地よいテンポで流れていくため、100分があっという間だった。
 ストーリ的にはメンバーのパーソナルなとことか、SYNGE高校の意味なんかもあんまり深くはなかったし、テンポ良すぎて解消できずに進んでいく感はあったけど、お兄さん(Jack Reynor)のキャラが良すぎたのと、Lucy Boyntonが可愛すぎたのは余韻を楽しめる。あとはSingStreetのメンバー見る前はあんまりそそられなかったけど、見たあとはみんな大好きになった。特にベースの子がいい。おもろい。

 アイルランドの雰囲気を服装や町並みから感じられて、とてもおしゃれな作品だと思った。玄関先で夕日を浴びるシーンや、祖父の船でミニ航海をするシーン。アイリッシュっていいね。誰が見ても面白い作品だと思いますが、80年代の楽曲が好きで、ブリティッシュロックに忠誠心がある人と見るとワクワクすること間違いないです。今後の彼の作品にもますます期待が高まるとともに、もう一度「Once」や「Begin Again」をみたいなと思うような作品です。
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