トメさん

シング・ストリート 未来へのうたのトメさんのレビュー・感想・評価

4.0
あらすじから、多分、落ちこぼれな高校生たちがバンドを通して、自分の殻を破っていく話だと思っていた。いわゆるウォーターボーイズ的な話だと思っていた。実際に、そういうストーリー構成であることには間違いないのだけど、どうも展開が早い。どうもそのストーリーとしての厚みが少ない。どういう訳で、こういう流れになったのかわかりづらい。そんな印象を持った。でも、全体を見たときの満足感や感傷的になる気持ちは何だろう。この感覚は、ウォーターボーイズには絶対ない。

その訳は、随所に出てくる色んな登場人物の暗い部分、ネガティブな部分。もちろんウォーターボーイズにもこう言ったシーンはあるし、そこを解決して乗り越えながら進んでいくんだけど、singstreetでは、ただただそういうシーンが出てくるだけ。

そう言ったところが、映画なんだけど、より現実的で、暗いんだけど、その部分をぐっと飲み込ませてくれる前向きな行動が際立つ。「現実ってこうだよなぁ」と思えるから、より感情移入できる。彼女のために作った歌の時に彼女は来てくれないだよな。そんなうまい話はないんだよな。でも、ほんの些細なきっかけが、人を踏み出させ、心の支えとなる。ちっぽけなことでも、井の中の蛙でも生きていくだけの十分な活力になる。

最初の方は、みんなダサくて、MVもダサくて、流行を追っていく感じもダサいんだけど、そこがカッコよくみえる。バカにするのは簡単だけど、バカにするだけでは、何も起きないし、何も作るらない。

映画を観た人は、Youtubeに上がっているSing Street - Drive It Like You Stole It (Official Video) を観て欲しい。全校生徒を巻き込んでのライブシーンを中心に、映画のとてもいいシーンのハイライトになってる。そして、最後のびっくりするほど怖いあのヒロインに主人公が「MVに出てくれない?」っていうところで締める。そっか、ここから始まったんだ。と勇気が出ること間違いなし。


個人的に好きなシーンを列挙。

お兄ちゃんが、主人公相手にというか自分(の不運)にぶちぎれるシーン。

あのシーンで、主人公が怖がるとかそうのじゃなくて、ただただ泣くところ。とっても悲しい涙でした。


それと、ヒロインのいろんな表情。曲を聴きながら、メイクを落とすシーンとか、ヘッドフォンで公園で聞くとこ。一番キュンときたのは、MV撮影終わりに電車で帰る時に主人公を見つめるシーン。あとは、さっきも言ったけど、一番最初の初対面の時のタバコをくわえながら主人公を見下ろすシーン。これは、怖すぎてちびるかと思った。 
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