砂米

ダゲレオタイプの女の砂米のネタバレレビュー・内容・結末

ダゲレオタイプの女(2016年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

黒沢清の海外作品ってどんな感じなんだろうな~と。
最初は台詞も少なくてゆったりした空気感があり、海外ロケ作品の『旅のおわり、世界のはじまり』みたいな感じかと思ったけど違う。
黒沢清独特の不穏な演出も特に感じられない。清の映画と知らなければ観てなかったろうなとも内心思いながら鑑賞していたのだが、途中からどんどん面白くなっていく。

階段から転げ落ちたマリーを病院へ連れていくため車を運転するジャン。
運転を誤って川の近くでマリーを落としてしまう。そこから黒沢清節が始まっていく…!
暗闇からヌッ…と瞳孔開いたマリーが直立して現れるの怖すぎるよ。よくジャン普通に声掛けれたよ。私だったら絶叫していた。

ここからどんどん不穏になっていき、白いカーテンもはためく、はためく!
本当か嘘か、マリーは死んでいるのか生きているのか、主人公の妄想と現実の境目が曖昧になっていく。どう話が展開していくか読めないので物語に引き込まれていった。

改めて考えると、今までの黒沢清に感じられるホラー要素は日本独特のジャパニーズホラーだったのかもしれない。
この映画の演出も今までの黒沢清作品と特に変わっていないのだと思うが今回はゴシックホラーみも感じた。
それは舞台も役者も海外の人達で、特にマリー役の女性は海外の古典ホラーに出てきそうな顔立ちをしている。昔のドレス姿にもなるし。
そういうことも手伝ってそう感じるのだろう。
それもお金持ちが住んでそうなお屋敷が舞台。
インテリアも高そうなものを飾ってて富豪じゃんか…。清は『回転』みたいなゴシックホラーに挑戦してみたかったのかなと思った。
今思うと舞台もお仕事も上品さと歴史を感じるからとてもホラーにマッチしていた。

後半から父親が妻や娘にしてきた過去が分かってきて謎がひとつひとつ解けていく面白さもあった。
それに役者陣が上手い!特に父親が素晴らしかった。
マリーは目の焦点がずっと合わないのだけど(後から分かったが父親に筋弛緩剤を飲まされていたため)あまりにも上手いので演技なのか、実際にそうなのか分からない。

後半からラストシーンの流れが本当に好みでした。
ラストも悲しいけど美しい…。一面の畑に佇む車。結局あの屋敷に帰ってしまう。
とても好きな映画でした。
砂米

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