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ダゲレオタイプの女のイワシのネタバレレビュー・内容・結末

ダゲレオタイプの女(2016年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

直立固定された女は如何にして横たわりそして再び直立の姿勢で現れるか。横たわる事は死を意味する。ストップウォッチによる正確な時間測定は死を遅延させ、生死のあわいの中で男達は幽霊、または幻影に出会う。生と死、現実と幻想、いくつもの境界線が引かれた、あらゆる間(あわい)の中に留まる事を了解したタハール・ラヒムの最後の台詞に泣いた。

怪奇映画的な拘束器具に垂直の姿勢で固定されるコンスタンス・ルソーの姿を見て思い出したのは、『007 ゴールドフィンガー』で水平の台に拘束されレーザー拷問にあうショーン・コネリー。巨大ダゲレオタイプの物々しい存在感は、娯楽映画に相応しいガジェット。監督本人の発言とは異なるけど、『ダゲレオタイプの女』は『クリーピー 偽りの隣人』よりも娯楽映画してると思った。幽霊が出現するシーンの演出(ビニールカーテン!)は「ザ・黒沢清」って凄い興奮したし。

映画の後半で、コンスタンス・ルソーとタハール・ラヒムのアパルトマンで同居するんだけど、その場所が一瞬、あの屋敷の上階にあるように思えてしまったのだが、その混同はどうやら僕だけではないようなので意図的なものか? あそこにいるコンスタンス・ルソーは『ジェーン・エア』的というか、いわゆる「屋根裏の狂女」の変奏のように思える。

途中で現れる謎の老女が、ロバート・ゼメキス『ザ・ウォーク』で何の前触れもなく屋上にやって来た謎の男を連想させて良い。「死は幻影」と意味深な台詞を残す老女は、椅子に座った姿勢で固定されるのだが、永遠を意味する垂直の姿勢と死を意味する水平の姿勢のちょうど中間のように見える。この座った姿勢で固定されるのはこの老女だけではなくて、後のシーンで別の人物が座ったまま身体を動かさない姿を見せる。その人物は一度床に横たわる姿勢をとっている。そしてもう一人、この老女から影響を受けたと思しき座ったまま身体を動かさない人物も登場する。

まんまやってるわけじゃないけど、開幕早々『列車の到着』でカマしてきたのには笑った。
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