先日見たゲーム史の上っ面をなぞって無邪気なゲーマーに迎合していただけの『ビデオゲーム The Movie』よりずっと面白い。ノーラン・ブッシュネルからビデオゲームの歴史が始まったとするのは同じだが、その後の語り口は全く異なる。アップルコンピューターが生まれ、体感型アーケードゲームが疑似体験を促進させて、たまごっちや懐かしいセカンドライフにFacebookアプリのような非ゲーマーの支持によって育まれた新しいコミュニケーションなどゲームがもたらした技術革新が主題。
ビデオゲーム自体についてもちゃんと描かれていてThe Elder Scrollsシリーズのトッド・ハワードやDOOMのジョン・ロメロなどのコメントを挟みながらゲーム史を辿っていくが良い事ばかり言ってはいない。ポンの頃からしてゲームは模倣と訴訟の繰り返しと語られるし、暴力ゲームや不謹慎ゲームなどありがたくないゲームへの言及も欠かさない。「そのゲームに費やした時間で何ができたか」と耳の痛いことも聞かされてゲーマーに甘い顔ばかりではない。ゲームに対して肯定的であるが非ゲーム的とされるゲームを強調しているようにその視野は広い。古くはファミコンロボから最近では福祉施設でのWiiフィットや教育現場でのダンレボのように生活に関わるゲームの在り方を描かれる。ただのゲーム好きには撮れないゲームの意義を描いた映画だ。