おとなのみほん

聖の青春のおとなのみほんのレビュー・感想・評価

聖の青春(2016年製作の映画)
3.0
勿体ないなあ。

原作を読んで、村山さんのことに関してもう少し知識を入れた上で再度考えたいなあとは思うのですが、無知なりに勿体無いと感じました。
元々の魅力的な人物像を実直に描けば、松山ケンイチの役作りも相乗して素敵な作品になったんじゃないかな。ドキュメンタリーとの境目が厳しいけど。

時間の過ごし方と言うのは人それぞれ。
人はその波を揺蕩い選択をして行くことで何かしらの道へ進んで行く訳だけれども。村山の場合、本来ならば自然と触れて来たであろうものが環境や自身の体調、諸々の事情によりシャットダウンされてしまった反動を将棋と言う武器に掛け、病室からあの一室へと突き進んだのは唯一の選択で例えそれが結果的に命を削ってしまうものであったとしても素晴らしい行動力だったと思う。

映画の中ではその命の消費をじりじりと描いて居るけど、逆にその命の物凄いエネルギーと言うか何処からそんな炎が湧いて出るのかと言うところをじりじり描いて欲しかったなと。個人的に。女性的なタッチにしたのは、村山自身の持つ背景に男性的なものが見えなかったからか。
村山は母親と過ごした時間が多かったからなのかな?とても女性的で、麻雀や競馬なんかを師匠から教わるとこなんか特にもう女が洋楽聴くのは男の影響みたいなあれですよね。
けれど真逆の道を歩み様々な誘惑を自らの意思で鎖ざし将棋に向き合う羽生の存在が、村山を本当の男にして行く。
羽生との一局は殺し合いでもあり、セックスでもあり。将棋に掛ける魂を唯一理解して貰えるんじゃないかと思える敵、同士、情人。
女を抱いたこともない、友達も少ない、身体も弱い。でもそれが何だ。周りからすれば親から貰った身体を自棄にしてと言われるのかもしれないけれど、俺の命だ。その命の熱量だけはなにものにも決して、遮ることは出来ないのだ。
これが「聖の青春」なのだ。