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君がくれたグッドライフのdubstronicaのレビュー・感想・評価

君がくれたグッドライフ(2014年製作の映画)
3.0
尊厳死というとても難しいテーマを扱ったロード・ムービー。

年に一度、集まって自転車旅行をする6人の仲間たち。行き先の決定は持ち回りで、今年はハンネスとキキ夫妻が決めたベルギーに行くことに。たいして面白くもない場所が選ばれた事を冗談半分に愚痴りながらも旅を開始した一行は直後にその理由が、ALSを発症してしまい余命僅かとなったハンネスが、尊厳死が認められているベルギーで自分の最後を迎える予定だということと、今回自分にとって最後の時間を仲間との変わらない旅で過ごしたいためその事を黙っていたことを知る。
混乱する一行はハンネスの希望を汲んで旅を続け、最後辿り着いたベルギーでハンネスは希望通り尊厳死を遂げる。

あまりに重いテーマが発覚して以降、いつも通りとはいかなくなった面々は、それでも旅を充実したものにしていこうとする。ただその重さ/軽さがしっくり来なかった。これは映画としてなのか個人的に(そこにいるメンバーとして、とも言えるかも)なのかはわからないが、そんなにあっさりハンネスの希望を受け入れられんだろう、と感じたし、それを反映されられる登場人物が見つけられなかった。そういう当惑もこの度の要素の一つと言えるので、もっと前面に出てきてもいいのでは、と思う。

道中、仲間が一人追加されたり、「課題ゲーム」という、話になって座った右隣の人に任意の課題をその二人の秘密として出して達成できたら勝ち?達成できないと他の人はどんな課題が出されたかわからない、というゲームをこなしたりこなさなかったりしながら、わりとそれなりに旅は断念されることなく進んでベルギーに到着。担当するはずの医師が事故にあっていたため一時はどうなることか?と頓挫しそうになる計画も、二人いる担当医師のうちのもう一方と連絡がつき、1日遅れで実行されることに。その1日がハンネスに自分の決断を覚悟させる1日となる。

ラスト、ハンネスの尊厳死が成立するシーンに関しては、あっさりすすんだことが、どっちに行くかな?と思いながら(ハラハラしながら)観ていたので、ハンネスの覚悟が変わることもなく粛々とすすみ、そりゃそうだよなぁと思う気持ちと、そうなっちゃうの?と思う気持ちが半々でなかなか良かったのではと思う。わかりやすい答えが出てしまってはいけない、個人的はこのテーマはそう感じている。

だからこそ、そのあとのシーンは蛇足に感じたが、あれがなければ観客はガス抜きが出来ず、あかりがついたらなんとも言えない表情が並んだことだろう。そこで切って欲しかったのが好みの終わらせ方だったが、今回は映画として選んだのは、1年後に同じ地を再訪する面々を、1年前の道中で出た「課題」であるスカイダイビングの変わりにバンジーを達成するキキを映し、ハンネスはここにいた、と1年前の砂浜に描くことで、仲間たちがハンネスの死とどう向き合うことにしたかの後日談を観客に伝えることだった。
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