鰹よろし

エクストラクションの鰹よろしのレビュー・感想・評価

エクストラクション(2015年製作の映画)
3.0
 CIAの工作員であるレナードは、とある組織への潜入捜査中身元が割れ拘束されてしまう。自らはその場を難なく切り抜けるが、何も知らずに自宅にいた妻子を狙われ、同僚(おじさん?)を救出に向かわせるもすんでのところで間に合わず、愛する妻を殺されてしまう。

 生き残った息子ハリーは目の前で殺された母の死を引きずり、また自らの命が危険に晒されながら、銃を撃つことも構えることも引鉄に指をかけることすらできなかった後悔を携え、父と同じCIAへの入局を決める。日々トレーニングに励み、厳しい訓練にも耐え腕を磨くも、現場での仕事は許されず望まぬ内勤の毎日。

 そんなある日、父のレナードが“コンドル”なるハッキング装置の移送作戦遂行中行方を眩ませてしまう。ハリーは自身を捜索に帯同させてくれと要請するも却下され自宅謹慎を言い渡されるのだった。「知るか、ボケぇ~!!」

 ブルース・ウィリス演じる父のレナードに主眼を置くオープニングながら、事件後主人公が息子のハリーへと移行することに違和感を覚えつつ、CIAに能力を認められず万年内勤に甘んじていたハリーの父親奪還劇を追いかける。彼は組織の後ろ盾無く単身で、時に合流した現場でバリバリの元カノとイチャイチャしながら、ひたすらに突き進んでいく。

 非常に展開が小走りで煙に巻かれそうに、いや無思考に陥り見失いそうになるのだが、彼を突き動かしているモノはというと、国だとか組織だとかへの忠誠心などでは決してなく、母親を救えなかった無力感と、父親の期待に応えられなかった自身への反抗心である。

 組織が懸念する身内が絡むことで生じ得る支障に塗れていく彼の姿は、その先にある真相を浸透させるのに良い塩梅であるし、何よりもブルース・ウィリスという存在故生じる「主人公あんたじゃないんか~い」問題の一手先を読んだ落としが見事だった。


「インデペンデンス・デイ」(1996)...「ゲット スマート」(2008)...
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