チーズマン

パターソンのチーズマンのレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
4.1
日常が愛おしく思える。

日々の暮らしがそう感じれたら良いのは誰でもそうだと思います、しかしその当たり前を映画で描くのはとても難しいことです。
単に退屈な作品になりかねませんしね。

しかし、この『パターソン』はそこを見事に、そして新鮮に描けていました。
月曜から次の月曜まで、朝起きるところから始まり仕事へ行き、昼飯を食べ、妻と夕食、犬の散歩でビールを一杯、そんな主人公パターソンの1週間を描いています。
毎日同じ、同じことしかしてないのですがやはり毎日が違う日なのです。

この映画が新鮮だったのは、その毎日を“詩”というものを通して描いていたところです。
同じ道のりや景色でも毎日少し違うとこに視線がいくパターソン、バーに飾られた写真やチェス盤、家のカーテンの柄でも何でも無意識に毎日違うところに視線が行ってることって誰でもあるんじゃないでしょうか。
そして人とのやりとりもそう、同じようなこと話してるように見えて毎日わずかに違ってますよね。
“詩”を通して見ることで、そういうわずかな違いの豊かさがより分かりやすかったです。

この映画が素晴らしいなと思ったのは、自分のように詩など書いたことないし普段触れることもないような人間でも、主人公パターソンの視線を通して、この映画を観た観客に自分にも世界を“詩的”に見る感性があったんだと、思い出させてくれる、または気付かせてくれるところです。

また明日から仕事だなあ〜、という日曜の夕方に観ましたが、明日からの1週間を少し味わってみようかなと思えただけでも鑑賞料金以上の価値があったと思いました。

普段シネコンの大作映画しか観ないような人にこそ観て欲しいなあと思う作品。

ライアン・ジョンソンのこの映画に対するコメントで「12時間でも観続けられる」というのには笑いましたが、多分観れますねえ酒飲みながら、それぐらい幸せな映画でした。
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