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パターソンのKotaのレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
4.1
“毎日が、新しい”

ジムジャームッシュ監督四年ぶりの最新作。彼の独特な世界観はそのままに、詩という新たなキーワードとともに綴られるどこにでもありそうな七日間。パターソンというアメリカの小さな町に住むパターソンという名のバス運転手。彼は早朝に起きて、妻にキスをし、バスを走らせ、家に帰り、犬の散歩をして、バーでビールを飲むという毎日を過ごしている。そんな単調で当たり前な毎日が、愛おしくてたまらなくなるジムの魔法。

作中でパターソンが妻の作ったカーテンに「一つとして同じ円がないところがいい。」と言っているように、まさに毎日は手書きで、1日として同じ日がない。同じ事をしたとしても、周りのユニークな人々が毎日を彩ってくれる。彼の映画の特徴が名前も出てこない、いわゆる“モブ”が映画の大半を作っているところ。バスの乗客や、ランドリーの黒人、オープンカーの若者など、彼らなしではこの映画は成り立たない。何故か詩人を目指す女の子と話している時泣けてきた。

パターソンが毎日を綴る詩は、ロンパジェットという実在の詩人が映画のために書き下ろしたもので、映画の中の文字はアダムドライバーの直筆。そして日常の中の小さな“非日常”として使われたのが、ジムの旧友であり日本人の永瀬さん。確かにパターソンを訪れる日本人とかまぁおらんわな。笑 イングリッシュブルドックのマーヴィンは最も素晴らしい演技をしたパルムドッグ賞を受賞してます。

パターソンという町は、地元のヒーローをバーの壁に貼るような小さな町。世界中の大半の人は知りもしない。(逆からみれば日本だってそうだよね。パターソンも日本は東京しか知らない感じだったし。笑)でもそんな町にも愛おしい人生を送る人達がいて、小さな変化を積み重ねながら生きてる。流れていくだけの7日間だけど、その瞬間を逃さずフィルムにしたような、素晴らしい映画でした。

ちなみに!!!
ジムジャームッシュはウェスアンダーソンの大ファンで、作中で出てくるバスの大学生2人はあの“ムーンライズキングダム”のサムとスージーなんです!!個人的に激アツすぎて!!!
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