落ちたフレンチトースト

パターソンの落ちたフレンチトーストのレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
4.5

パターソンの詠む詩は、叙事詩的で、韻を踏むことや、感情の機微を謳うというよりも、美しいと思う事柄を見つけることに価値があるとしているようだ。だからこそ、コインランドリーで調子こいてソロでラップの練習する黒人の、韻を踏んでいないラップを良しとし、母親と姉を待つ路傍の女の子の詩を良しとしたのだろう。無論、路傍の女の子は、パターソンの価値観と同じだったわけではない。まだ形式の定まらないゆえに、詩とはこうあるべき、と思う、例えば韻を踏むような美辞麗句を取り入れたかったりするわけだが、パターソンはそうした価値観をありのままに賞賛している。いわばtabula rasa的な美をそこに見出している。

こうした詩のありかたのパターソン的価値観は、そのまま映画に適用されているように思える。そして、路傍の女の子に感じた美を、白紙のノートのプレゼントが受け継いでいる。