emu

東からのemuのネタバレレビュー・内容・結末

東から(1993年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

アケルマン映画祭2023のオープニングはこの作品から。室内に佇む女性たちのポートレイト、空気の匂い、その質感まで触れてしまえそうなフレームは本当に素晴らしい。寒々とした雪道と空の色が、同じ淡いグレーをしていること。夜の灯の黄色と緑、青。テレビを見ている息子の隣で、それを気にもせずピアノを弾いている母親のこと。レコードの針を変えたあと、台所でパンとハムを黙々とナイフで切っているあの無さえ感じる所作を今も憶えている。女性たちは室内で写真のようにじっと動かず表情を変えない。画面の一つ一つにアケルマンの意図を感じた。路端でただ立ち尽くし何かを見つめている人々。駅のホーム、行き交う雑踏、向けられたカメラをじっと見つめ離れてゆく。何を思っているのだろう、何を見つめていて、何を待っているのだろう。永遠を閉じ込めたような記録のコラージュに思いを馳せている間にエンドロールになっていた。
emu

emu