Shelby

少女椿のShelbyのレビュー・感想・評価

少女椿(2016年製作の映画)
3.2
毒々しい色使い&溢れ出る昭和モダンなパッケージに惹かれ、結構前から見よう見ようと思っていた作品。丁度無料で見れるとのことで、暇つぶしに見るか、くらいの心持ちで鑑賞。

時は昭和13年、3年前に父が家出し、母を病気で亡くした12歳の少女みどりは見世物小屋「赤猫座」の主人の甘い誘いに乗ってしまい、そこの下働きとして使われる。異形だらけの芸人達にいじめられ、毎日雑用を押し付けられ、辛く当たられる毎日。ジリ貧のサーカスを救うべく現れたのは、ワンダー正光と名乗る手品師の男。瞬く間に売り上げを伸ばした彼にみどりは気に入られ、虐められることもなくなり、やっと幸せをつかみ始めたかと思われたが...

原作が漫画だということだったが、予備知識一切無しだったのもあって正直何が起きているのかちんぷんかんぷん。なんでそこで突然陵辱されんの?普通目玉舐めさせるか?そんなプレイあんの?犬鍋って美味いの?と終始目を見開きっぱなし。序盤で主人公みどりが棒読みで、テロップ付きの大まかな粗筋を読み始めるもんだからついつい笑ってしまった。すんごい雑に端折られてるなぁ、って私でも分かる。更にぶつ切りの話を無理矢理持ってきているものだから継ぎ接ぎだらけのチープな展開。なんだこれ、と思いつつ見進めてたのはきっと私はこの世界観嫌いじゃないから。低評価の割には普通に見れたし、駄作とは言い難い作り。だからと言って良作とも言えないが、私は割と楽しんで見れた。

演技の粗さが目立つ中、やっぱり安定の風間俊介の演技力。つい見入ってしまう。魔力を使い果たしたためか、みるみる間にお爺さんとなってしまい衰弱していくのがよく分かる。彼ありきの作品ではなかろうか。

不条理という言葉がぴったりな作品。不幸の星のもとに生まれてしまった主人公みどり。幼いが故に為す術もなく目の前で起こる悲惨な出来事にただ、黙って息を潜めるだけの生活。
そんな中、ワンダー正光に見初められてから生活が激変する。ここへ来て初めて人間らしく扱われ意地悪も受けなくなる。ちょっと束縛がすぎるが、愛されるということを知った初めての体験であったであろう。幸せから不幸に転落するのも一瞬で。結果、ワンダーが死に、容赦なくみどりはまた一人ぼっちに逆戻りとなる。
なんだろう、世の中って割とこんなもんだよね。後味は悪いけれど、決して夢のようなハッピーエンドで終わらせない結末は好感が持てた。
最後のみどりの意思を持った鋭い眼光にも、ちょっと気圧された。

物凄いインパクトを残すのに、そこまでグロテスクさを感じさせない。映像のチープさは感じるが、妖艶でいて汚らしい。どぎつい配色の中漂う隠しきれない不幸な日常。私はこの退廃的な世界観が嫌いにはなれなかった。決して万人にはオススメできないが、ハードルを下げて見てもらいたい映画。
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