垂直落下式サミング

ドラえもん のび太の太陽王伝説の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

4.0
ひみつ道具タイムホールの故障により、古代文明・マヤナ国へと流れ着いたドラえもんと仲間たち。そこで、のび太に瓜二つの王子に出会って、王子の母である女王を苦しめる魔女の呪いに立ち向かう。
オープニングがめっちゃ良かった。ケツァールになったドラえもんがパタパタ飛んでいって、キャッツみたいな衣装を着たのび太たちが、あざといくらいファーリー・ファンダムなかわいさを振り撒く。南米大陸が舞台なので、みんなジャガー柄。ドラえもんの歌も、コーラスバージョンでゴージャス。
そこで出会ったのび太とウリ二つのティオ王子と、過去と現代に入れ替わることで異文化交流を描いている。高貴なものと下賎の輩、身分に差のあるふたりが入れ替わる王子と乞食を、南米大陸の古代文明を舞台に語り直し。
現代の日本にやってきたティオ王子のお守りを任されたドラえもん。王子のワガママぶりに手を焼いて、訪ねてきたしずかちゃんを家から追い出したり、余は空腹じゃ食物をもてと傲岸不遜な振る舞いに怒るが、一度は突き放すもののすぐに後を追ったツンデレ。
威勢がいいけど人一倍ワガママで他人への優しさがない王子と、優しさはあるけど徹底的にヘナチョコで責任感のないのび太という、キャラ同士の対比がいい。
この足りない同士のふたりが、友情を育むことによって勇気と優しさを分けあうことで、ちょうどよくなるという王道展開。ティオは民の声をきくいい王子になり、のび太は旅のなかで根性をみせる。
のび太が何度も言う「1たす1は1より小さくなるとは思わない」ってセリフは、バカバカしいけれど、核心をついたエモさ。
君が1だとして、そこに僕を足したとしても、戦力としてはまったくもって対等の扱いにはなれないけれど、それでも僕がこっち側に加わってるうちはプラスのはずだって、のび太らしい理論。
情けないハナシなんだけど、まわりもダメダメなのび太がこう言って頑張ってるうちは、自分たちが先に音をあげるわけにはいかないなと、結果として仲間たちへの発破をかけることに成功している。のび太本人は、そこまで考えていないだろうけど。
レギュラーメンバーのなかでは、今回特にジャイアンがいい。彼の度胸と暴力性は、マヤナ国の文化とジャストフィット。ガキ大将キャラクターのよさが全面に出ている。空き地では、王子と互角の殴り合いを繰り広げる。特にイシュマル先生との師弟愛は必見。
セリフもいい。コイツには、ロックスターの資質があるんだ。はじめて気付いた。郷ひろみとか、エレカシ宮本みたいな、自己の才能への確信がパナイ。俺はすごい!俺は最高!俺はホンモノだ!昔ながらの商店の倅に宿ったロックの魂。この「自分信じ力」を、大人になっても変わらず持ち続けていてほしい。