MasaichiYaguchi

ジュリエッタのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ジュリエッタ(2016年製作の映画)
3.4
スペインの名匠ペドロ・アルモドバル監督の最新作は、「オール・アバウト・マイ・マザー」や「ボルベール 帰郷」に連なるような母と娘の関係を描いたドラマ。
カナダのノーベル賞作家アリス・マンローの短編集「Runaway」の3編を原作に映画化していて、12年前にヒロイン・ジュリエッタの前から忽然といなくなった一人娘アンティアへの複雑な思いと、彼女が自分自身を見詰め直す為に過去を振り返る形で物語が展開する。
何故彼女の前からアンティアは理由も告げずに姿を消したのか?
この作品は、その訳を解き明かしていくものであり、ジュリエッタの愛にまつわる罪と罰を浮き彫りにするものでもある。
描かれた彼女の物語を観ていると、私は人間の“業”のようなものを強く感じてしまう。
主人公をはじめとした登場人物たちが自分本位の愛欲や自己実現欲に塗れ、やがて身近な者たちとの関係がぎくしゃくして壊れていくのを、ジュリエッタの懺悔と共に描いているように思う。
本作では、このジュリエッタをエマ・スアレスとアドリアーナ・ウガルテというベテランと新進の2人の女優が演じていて、夫々の持ち味を発揮して若き頃と悲嘆に沈みがちな中年の主人公を演じ分けていて印象的だ。