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ジュリエッタのkomoririririのレビュー・感想・評価

ジュリエッタ(2016年製作の映画)
4.5
なんでこの監督は女の性根がこんなにもわかるんだろう。
いつものような狂気や起伏はないので、映画としては大人しいけれど、一人の女を通して、ひとつの大事なことをしかと心臓に受けとめました。

子はいつも親を憎み、親は子を育ててやっと同じ道を繰り返していると気づく。めちゃんこ当たり前の普遍的なお話をこうも美しく儚く昇華させるなんて、もう。たまらない。

25歳のジュリエッタが娘から母に変わっていく変貌がとても丁寧に描かれてる。映像ではふつう寒くなる、若き母、老いた母、二人一役のキャストがすごくこのお話に生きていて、舞台を見ているようだった。
死と性が衝突する列車。嫉妬に荒れる海辺。新しい母と作物が実る実家。唐草模様のマドリードのアパート。
自然と人工の中を淡々と進む物語に、生きる赤と静止した青のコントラストを画面いっぱいにぶち込んで水彩のように儚く溢れる。

特に、ボケた母を庭に連れ出すシーン。
鬱の母の濡れた髪をふくシーン。
あぁ母ちゃんのあんな顔を何度も見たことがある。

母の心のしこりは子供に伝染る。そのテーマをサスペンスに描いていて、答えはすごく単純でもあった。自分は小さい頃に母の情緒をうけとめ過ぎて苦しくて仕方がなかったから、すごくよくわかる。ただ誰だって、ムカつくのも涙が出るほど会いたくなるのも母ちゃんなんだ。

生きてきたほとんどのやるせなさと一握りの希望。
スクリーンに写るすべてに敬服。
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