ボブおじさん

サイドウェイのボブおじさんのレビュー・感想・評価

サイドウェイ(2004年製作の映画)
4.0
「アバウト・シュミット」で注目を浴びたアレクサンダー・ペイン監督が、その名声を不動のものにした、迷える中年男の〝人生の寄り道〟を描いたロード・ムービー。

教師をしながら小説家を目指すマイルスは、結婚を控えた売れない俳優のジャックを連れ、独身最後の記念にカリフォルニアのワイナリー巡りの旅に出る。

大学最初のルームメイトだったという2人だが、性格も趣味も全く共通点がなく何から何まで噛み合わない。マイルスはジャックに純粋にワインの素晴らしさを教えようとするのだが、ジャックは独身最後のバチュラー旅行で女とヤルことしか考えていない。

特にジャックは男から見ても軽率で軽薄。いずれ痛い目に遭うぞと思っていたらやっぱり💦。もっともマイルスも誕生日を祝うために立ち寄った母親のタンスから、へそくりをくすねているのだから似たり寄ったりか😅

2人は道中で出会ったマヤとステファニーとデートをすることになり、ジャックは婚約者がいながらステファニーと意気投合し深い仲に。一方マイルスは1年前に離婚したというマヤに魅了されるが、冴えない自分を自己嫌悪し、彼女に好意を明かせない。

離婚した相手ヴィクトリアのことをまだ引きずっているマイルスは、歳月をかけて書き上げた小説の評価も得られず、すっかり自信を失っている。そんな彼もワイン🍷のこととなると途端に饒舌になり、自信に満ち溢れ語り出したら止まらない。ワインの熟成についてのうんちくを滔々と語るマイルスだが、肝心の自分自身は成熟とは程遠い😅

考える前に行動し軽はずみながら人生を謳歌するジャックとは対照的に、考えてばかりで行動できない何事にも消極的なマイルスは互いに相手のことをダメな奴だと思いながらも見捨てない。案外いいコンビなのかもしれない。

ジャックとの珍道中を終えたマイルスは、小説家にはなれずに元の教師としての日常に戻る。悪友は予定通り資産家の娘と結婚し、別れた妻は新しいパートナーとの間に新たな命を宿していた。

特別大きな出来事が起こるわけでもない映画だが、ワインのごとく「甘味」「酸味」に「渋味」が程よく混ざり合った大人の味わい。ラストシーンでは飲んでなくてもほろ酔い気分にさせてくれる。

1杯目の口あたりより2杯目3杯目と味わうごとに渋味が旨味に感じられる、決して高級ではないが味わい深い作品だ。