スコセッシフォールド全開

リトル・マーメイドのスコセッシフォールド全開のレビュー・感想・評価

リトル・マーメイド(2023年製作の映画)
4.3
アニメ的なギャグはどうしても犠牲になってしまうのだけど、それでも実写とリメイクの良さがバシバシ伝わってきて最高だった。
海難事故、アースラ戦のアトラクション感。音響でスケールアップを実感する。『Unter the Sea』、市場の海と陸のお祭り騒ぎ感。対比とかじゃなく、両方とも楽しい、世界の肯定。アリエルがセバスチャンとハモる。

狂気の父親崇拝コンサートのばっさりカットと、定例会議への変更が正解。エリックとアリエル同様、姉妹全員が親が敷いた道をただひたすらに泳ぐだけの人生になっている図。ただ『なんでここを離れたがるのか?』の発言に、父親から離れたくない、ではなく純粋にこの活動が好きなのが伝わってくるのでよし。

エリックの天体観測好き設定。探究心の象徴、具現化した趣味。アリエルが"結婚して"ハッピーエンドにしたオリジナルとの乖離。なぜ海から離れたかったんだっけ?の答えとしてラストでちゃんと最適解をやる。共通項があるので仲良くなるのも説得力がある。外界に出ることでようやく彼らは救われる。

ラストの全員集合が素晴らしい。アリエルが自立したこと、親が束縛していたことに気付いたこと、そしてなにより陸と海の国の誤解を解くキッカケになったことを評価したのが良い。アースラ、或いは自然現象によるもの。海から顔を出すな、が破られる。ダイバーシティが押し付けがましい、ではなくそれが元々普通の世界だったんだけどなぁ、て話。

アースラは文句なしに良い。ダメ押しのアンコールでまた歌う。下半身は自我があるんだね。最終形態がしっかり怖い。
ラップ『スカットル・スクープ!!』。歌っている場合じゃないけど、セバスチャンも気持ちよくなって一緒に歌っちゃう。
絶妙なリアリティを保った自然界の演奏。ASMR作曲の達人だった。

歌声が人間を惑わす人魚の宿命、特性は実はアースラの魔法だった。十年のしこりが取れてスッキリ。腑に落ちたー。

フランダーの造形も役どころも、もう少しどうにかできそうな気がする。フィクショナルな造形をした海洋生物はいたし、セバスチャンが結構キュートだったので。改変という機会なのに、唯一会話をすることができる魚、それだけの存在なのは悲しい。

比較するのはあれだけど、アバターWoWの流体表現は至高だと改めて感じた。この『リトル・マーメイド』は波を受けている抵抗感とか、浮遊物のディテールまでカバーできていなかった。

生殖方法も遺伝方法もわからないのでそれらに関する違和感は議論をするだけ無駄。幻獣に科学を求めるな。

あの既視感はヌートバーか、