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冷たい熱帯魚のkojirinのレビュー・感想・評価

冷たい熱帯魚(2010年製作の映画)
4.7
エログロ映画の代表。真っ赤な血の海を笑顔で観客に見せてくれる。でんでん演じる村田が賢くて計画性もあり、喋り方や自身のキャラクターの維持、社本への気遣いと脅しのバランスの取り方などとにかく優秀で凄い。

村田が最終的に社本を成長させ、覚醒を促す流れになるのが非常に面白い。村田が普段社本がかけているメガネを強制的に外させるシーンは、ルックスの変化と心の変化をリンクさせる働き、ルッキズムの表象、自我の獲得や解放と解釈しても良いかもしれない。この大きな宇宙の中で地球はちっぽけで、社本を取り巻くカオスな状況はさらに小さなものだがわ生々しく残酷で暗い現実なのである。プラネタリウムを見て、なよなよした性格で声も小さくほんわかした気分で男らしさや父親らしさという牙も持たない社本という男を覚醒させた村田はやはり凄いし、人間の気持ちを言い当てコントロールすることに長けた逸材である。

そして特に印象的だったのは村田が無意識的に自身の親について言及するシーンである。この世界での狂っている人間や、いわゆる「普通」とかけ離れた人間、特に村田や愛子などが生まれながらに悪であると決めつけられておらず、周りの環境、特に親の存在が子供の心を歪ませ悪に、狂気に近づいていくきっかけである事が表されている。これは性悪説の否定だと捉えることもでき、ラストシーンの娘の笑顔と罵倒も、社本と妙子の自業自得だと一蹴することも可能である。
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