とも

ふたりの桃源郷のとものレビュー・感想・評価

ふたりの桃源郷(2016年製作の映画)
4.8
"これは僕の家族の話でもある" 見始めてすぐそう思った。

電気も水道も通っていない山口県の山奥で暮らす寅夫じいちゃんとフサコばあちゃん。その姿を約25年にも渡り地元テレビ局が追い続け映画化された。

山奥で暮らすことに心配する娘たち。ふたりもその気持ちは十分に理解しているが、それでも"心"は山にあった。そんなふたりの想いを知った家族たちの支えに終始、涙が止まらない。

僕のおじいちゃんとおばあちゃんも和歌山の山の中で暮らしていて、スクリーンの二人の姿と重ねずにはいられなかった。今は山上の町に住む僕の両親がよく訪ねてくれている。ふたりもきっと山を離れられないだろう。最後までみんなで支えたいな。

仕事にお金、友人関係、テレビやネットの情報、あまりに多くのものに支配される日々。
そんな中で人生で大事なものってなにか?
言い方を変えると「人生にとっての豊かさ」とはなにか?

その答えの一つが、この映画の中にあるのでは?
小さいとき山のお坊さんに「豊かな人しか幸せになれへんで」と教えられた。当時は「お金持ちになれってこと?」って思ってたけど、この言葉の意味がやっとわかったような気がする。

訪ねて来てくれた家族、そして取材に来たスタッフたちが帰る際に、足が悪くても見送りに出て「ありがとーう…」と見えなくなるまで何度も繰り返すその気持ち。マツタケの代わりにプレゼントした1本のリンドウ。そして最後まで支え続けてくれる家族たち。
紛れもなくふたりはたくさんのものを持った豊かな人生だった。
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