bluetokyo

鉄コン筋クリートのbluetokyoのレビュー・感想・評価

鉄コン筋クリート(2006年製作の映画)
4.0
これってリバイバル上映していたのね。レンタルで見てしまった。絶対に劇場で見るべき傑作。もったいないことしてしまったなあ。
シロとクロの住んでいる宝町って、どんなところだろう。原作者の経歴がわからないので想像するしかない。
見た限りでは下町、時代はバブルの前ぐらいだろうか。バブルのあぶく銭で滅びゆく下町が生き永らえていた時代かな。
バブルの前の下町って、なんだろうか。それは、市場経済という名の統制が存在しない共同体である。
では、なにで成り立っていたのであろうか。一言で言えば、「暴力」だ。
ただ、暴力だけなら殺し合いになってしまう。その暴力を統制していたのが、「任侠道」いわゆる義理人情である。
たとえば、そういった世界には、侠客、といった身分の人間がいる。いまでいえば、公務員と政治家を合わせたような存在である(まあ、平たく言えば、「やくざもの」なんだけど。組織としてのやくざ、暴力団ではない)。
この映画の世界は、まさにそういう世界なわけである。まあ、大自然の動物的な世界、ということでもある。

主人公は、クロとシロの二人で、家族も家もない。つまり、戸籍も住所もない。ということは、近代的な国家組織の中に組み込まれていないわけである。いわば、浮浪者なわけである。では、二人は、単に浮浪しているのだろうか。
どうも、そうではなさそうなのだ。クロは高いところに上って、上からしきりに望遠鏡で宝町のあちこちを見ているのである。なんのためだろうか。それは、冒頭のシロの独白からわかる。ようは、平和を保っているわけだ(侠客だね)。
一方、大精神会というやくざ組織の幹部(?)、ネズミが宝町に戻ってくる。なぜ、呼ばれたのかは、あとでわかってくる。当然、宝町の平和を乱すので、クロとひと悶着を起こす(ネズミの舎弟、木村とだが)。
なんで、大精神会がなにかをやろうとしているのか。それは謎の組織がレジャーランド「子どもの城」を造成するため、地上げその他の、いわゆる汚い仕事もあるために、やくざ組織も動員されたわけだ(まさにバブル)。ヘビがやってくる。
あれ? やくざって、旧世界の組織じゃなかったっけ。やくざは、任侠道がなくても、たとえば、カネだけでも動くのだ。
謎の組織は、三人の殺し屋を連れてくる。クロとシロは、追い詰められていく。そこで、別々に行動することにする(シロは警察に保護してもらう)。
一方、ネズミは、旧世界を破壊してしまうことに乗り気ではない。というより、まったく協力しない。なので、裏切りにあい殺されてしまう。
この場合のやくざ(ネズミ)は、任侠道によるやくざだ。カネに基づくやくざではない。
子どもの城が完成し、そこに迷い込むクロ。そこに謎の組織の殺し屋がやってくる。クロを始末するためだが、イタチがやって来て、あっという間に、殺し屋は殺されてしまった。
謎の組織、ヘビも裏切ったやくざに殺された。さらに、そのやくざも殺し屋に殺された(無統制な暴力の成れの果て)。
暴力が闇落ちした姿が、「イタチ」なのだろう。イタチは、クロの別人格だ。
そこに、シロがやってきて(白いハト)、つまり、これはクロのなかのシロだな、クロは闇落ちしないで現実に戻ってきた。
最後は、クロとシロ、海にいる。これは大自然に戻ったということだね。
地球の平和が乱されると、たぶん、いや、間違いなく、クロとシロは戻ってくる。
bluetokyo

bluetokyo