sasa

さよなら、ぼくのモンスターのsasaのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

主人公の抱える、同性愛であることへの恐怖、同性愛であることを知られることへの恐怖をあらわす比喩や示唆があちこちに散りばめられていて、そのほぼ全部が解釈しやすい形だったのでしっかり映画を味わうことができた。ただ、ネジを嘔吐するシーンは未だによく分からない。

当然のようにハムスターが喋るが、あれは当然ながらオスカーの無自覚の妄想なのだろうと思う。ワイルダーに「体がオスなんだからオスだろ」と言われたときに男声になっていたから。ラストのシーンで寿命についての告白があったときも、オスカー自身も違和感を抱いていたが気づかないふりをしていたことの表れだと思う。

幼い頃の殺人事件がトラウマになり、同性愛者であることを隠そうとする。父親が話していた吸血鬼の話のように、自分は人外だからバレたら殺される、と感じていたのかもしれない。
冒頭で父親が風船を使ってオスカーに夢を見せようとするシーンがすごく良くて、いい父親として登場するのかと思っていたが、印象はどんどん悪くなっていった。逆に、幼いオスカーを捨てたはずの母親が最後の救いになったりしていて、家族とは一元的に評価できる存在ではないのだということを改めて感じた。

ワイルダーが男でも惚れるくらいセクシーだった。同性愛を扱った映画にありがちな『同性愛者は中性的なイケメン』というステレオタイプから逸脱していた点も良かったと思う。イケメンはヘテロだし、ホモセクシャルな主人公の容姿は平凡。二人のあいだに特別な関係も生まれない。

父親に殴りかかろうとするシーンで、高ぶった感情をさらに煽る音楽も良かった。心理描写や比喩が多彩で、登場人物の個性の深みも感じられる、良い映画だった。
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